患者の達人
腹膜透析の情報誌「スマイル」
2022年スマイル夏号 腹膜透析（PD）と共に自分らしく暮らす患者さんをご紹介します。
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。
PDの処方は医師の判断に基づき行われます。また、「患者の達人」の記事には患者さん個人の感想・意見が含まれており、全ての方に該当するものではありません。
主治医や看護師などの勧めでAPDを導入
15年ほど前、人間ドックでの指摘をきっかけに、腎臓が悪いことに気付いた山田さん。以降は毎月近医で検査を受け、腎機能が悪化しないよう気を付けながら過ごしていました。「その後、静岡県立総合病院をご紹介いただき通院し、指導に従い食事や運動などを頑張ってきましたが、5年ほど前に『このままだと1年後には透析導入になる可能性があります』と告げられ、ショックを受けました」と話します。その後、管理栄養士の指導と奥様の協力の下、さらに食事に気を遣い、腎臓を守る生活を続けました。
写真：前列左から山田さんの担当医の伊東悠貴先生、
森潔先生と田中聡先生。後列はPD担当スタッフの皆さん
しかし、4年ほど経過した2020年の年末、倦怠感と食欲不振により急激に体調が悪化。耐えられなくなった山田さんが透析について主治医に相談したところ、提案されたのが夜間寝ている間に機械で自動的に透析液の交換を行う腹膜透析（APD）でした。APDであればこれまでと大きく変わらない生活を送れると思ったこと、看護師全員が勧めてくれたこともあり、APDの導入を決心します。2021年2月にカテーテルの埋め込み手術、7月に出口部を作製する手術を受け、APDを開始しました。
「人生初の入院生活で多くのことを学びました。まず、主治医の先生に全幅の信頼を置くことができました。そして、看護師さん達の24時間患者に対して見事な接遇、心に沁みました。沢山の感動をいただきました。最先端の医療設備・最先端の医療技術、それにも増して医療に当たる医療従事者1人1人の人間力に勝るものはないと強く感じました」（山田さん）。
より良いPDライフを送れるよう患者同士で交流を
APD開始後は治療に加え、規則正しい生活を送るようになったことで体調は回復。食欲が戻り、倦怠感もなくなりました。食事は今も奥様が食材や調味料をきめ細かく確認してつくっていて、管理栄養士さんも感心されるほどとのこと。山田さんは「面と向かってはなかなか言えないのですが、10年以上も協力し続けてくれている家内には感謝の気持ちしかありません」と少し照れくさそうに話します。
現在の楽しみは昨年末に再開した趣味のゴルフで、仲間と一緒に月に3〜4回ラウンドしています。また、ライフワークとして掲げる中小企業の活性化の一環である若手経営者の育成や講演活動、ビジネス書籍の上梓などで多忙な日々を送っています。
今年に入り、山田さんはPD患者同士のつながり、仲間づくりをしたいと考えるようになりました。「より良いPDライフを送れるよう、患者会のようなものを立ち上げて情報交換や交流をすることができたら、心強いですよね。特に、いつ起こるか分からない自然災害に対応できるよう勉強会を企画したいと考えています。また、私がPDを始めるときには不安でしたから、これから透析が必要になる方に自分の体験を伝えられたらとも思います。社会へ恩返しをしていきたいという気持ちです」と熱く語ります。最後に、「病気になったことで家内や医療従事者、コールセンターの担当者など、多くの人へ感謝の気持ちが芽生えました。病気を抱えてはいますが、今、幸せだと思います」と微笑みを浮かべました。
ドクターからのメッセージ
静岡県立総合病院 腎臓内科
伊東 悠貴 先生
PDは自由度が高く、日常生活に大きな支障を来さないよう調整しうる点でもアクティブな山田さんにお勧めできる治療法でした。導入後も日常生活における負担は大きくはなく、趣味のゴルフを再開されたと聞きとても嬉しいです。経過も良好で、PDをなるべく長く継続いただけるようお手伝いできればと考えています。また、ご自身の経験を基に、今後PDを検討する方の参考になればと静岡で患者会の設立を検討されていることも聞いています。医療従事者からの説明だけでなく、実際に治療をされている方から情報を共有いただける機会は大変貴重です。ぜひ前向きに進めていただきつつ、今後も元気な毎日をお過ごしください。
