人工透析 費用
透析・人工透析にかかる費用と自己負担額を
助成制度で抑える方法

人工透析にかかる費用のリアルな実態と、その経済的負担を大幅に軽減するための公的制度について、網羅的かつ具体的に解説します。


日本の公的制度を正しく活用すれば、人工透析の自己負担額は月額1万円~2万円程度、場合によっては無料にすることも可能です。 この記事を最後まで読んでいただくことで、人工透析にまつわる費用について深く理解いただけるでしょう。 ぜひ参考にしてみてください。

まずは知っておきたい、人工透析にかかる費用の全体像


人工透析の費用は「医療機関に請求される総額」と「患者さんが実際に支払う自己負担額」に分けられます。
外来血液透析(HD)の医療費総額は月約40万円、腹膜透析(PD)は30〜50万円が目安です。
ただし特定疾病療養受療証を取得すると自己負担は1万円(高所得者でも2万円)に抑えられます。

医療費助成制度で抑えられる自己負担

自立支援医療や障害者医療費助成制度を併用すれば、通院交通費や入院時の食事代を除き自己負担ゼロになる例もあります。手続きは主治医や病院の相談員に確認しましょう。

区分 医療費総額/月 公的保険後(3割) 特定疾病療養後 実際の自己負担*
血液透析(HD) 約40万円 約12万円 1〜2万円 1〜2万円
腹膜透析(PD) 30〜50万円 9〜15万円 1〜2万円 1〜3万円

*光熱水費・衛生用品・交通費などは自己負担。

血液透析(HD)の費用について

HDは週3回、1回4〜5時間が一般的で、1回あたり3万円前後の医療費が発生します。
月12回換算で40万円弱ですが、自己負担上限は1〜2万円です。交通費(月数千円〜1万円)や仕事を休むことによる機会損失にも注意しましょう。

月額自己負担モデルケース

会社員Aさんが特定疾病療養受療証と障害者医療費助成を利用した場合、医療費自己負担1~2万円+交通費5,000円で月~1~2万5,000円ほどになります。

腹膜透析(PD)の費用について

PDは自宅で毎日行うため、医療機関に払う管理料はHDより少ないものの、透析液や備品が加わり月30〜50万円が総額の目安です。
自己負担は1〜2万円ですが、電気・水道代や廃液処理費が月5,000〜1万円程度かかります。

ランニングコストの内訳例

APD装置を夜間使用する場合の電気代は年間1万円程度、CAPDではごみ袋代が増える程度です。透析液の保管スペース確保も忘れずに。

透析に必要な「初期費用」


透析導入時にはランニングコストと別に「初期費用」が発生します。
ここでは手術費用や装置レンタルなどを整理します。なお、高額療養費制度は「1か月(暦月)ごと・医療機関ごと」に上限額を判定します。
したがって同月内にシャント手術で入院し、外来で透析も受けた場合でも、両方の医療費合算で自己負担が抑えられます。
退院が月をまたぐと上限がリセットされるため、スケジュール調整だけで数万円節約できるケースもあります。

血液透析(HD)

HD導入には腕に動静脈瘻(シャント)をつくる手術が必要です。
医療費総額15〜20万円のうち自己負担は高額療養費制度適用後で2〜6万円程度が目安です。

シャント手術費の例

費用項目 医療費総額 自己負担(3割) 高額療養費後
手術・入院 15〜20万円 4.5〜6万円 2〜6万円
超音波検査 1〜2万円 3,000〜6,000円 上記に含む

*所得区分で上限が変わります。

腹膜透析(PD)

PDでは腹腔内にカテーテルを留置する手術が必要で、総額20〜30万円、自己負担3〜8万円ほどです。自動腹膜透析(APD)装置レンタル料は月5万円前後ですが、医療費扱いのため上限内に収まることが多いです。

PD導入時の付帯コスト

費用項目 目安 備考
カテーテル手術 20〜30万円 自己負担3〜8万円
APD装置レンタル 月5万円 医療費扱い
自宅改修・備品 2〜5万円 棚・備蓄スペースなど

人工透析の費用は「高く見えても自己負担は制度次第で抑えられる」のが実情です。
制度を知らずにいると本来払わなくて良い数万円を負担してしまうこともあります。分からない点は遠慮なく医療スタッフへ相談し、安心して治療に臨みましょう。

人工透析の費用負担を劇的に軽減する3つの必須公的制度


「年間500万円」という高額な医療費を、現実的に支払い可能な金額まで引き下げるための公的なセーフティネットについて解説します。 これらの制度は、段階的に適用することで、負担を劇的に軽減する仕組みになっています。 複数の制度を組み合わせることで、自己負担額はごくわずかになります。 それでは、この負担軽減を実現する3つの柱となる制度を、一つずつ詳しく見ていきましょう。

特定疾病療養受療制度

人工透析患者にとって、最も基本的かつ強力な制度が「特定疾病療養受療制度」です。
これは、人工透析のように長期間にわたり高額な治療が必要となる特定の疾病について、医療費の自己負担に上限を設ける国の制度です。

制度の概要

患者さんが加入している公的医療保険(会社の健康保険組合、協会けんぽ、市区町村の国民健康保険、後期高齢者医療制度など)に申請することで、「特定疾病療養受療証」が交付されます。 この受療証を医療機関の窓口に提示するだけで、その医療機関での人工透析にかかる保険診療の自己負担上限額が、月額1万円になります。 ただし、所得が一定基準以上の方(標準報酬月額53万円以上など)は、上限額が2万円となります。

注意点

この上限額は、医療機関ごと(入院・外来は別カウント)に適用されます。
例えば、A病院への通院で1万円、B薬局での薬代で1万円、というようにそれぞれで上限額まで負担が発生する可能性があります。
また、入院時の食事代や保険適用外の費用(差額ベッド代など)は対象外です。

重度心身障害者 医療費助成制度

「特定疾病療養受療証」によって1万円(または2万円)まで下がった自己負担額を、さらに軽減、場合によっては無料にするのが、お住まいの自治体(都道府県・市区町村)が独自に行う医療費助成制度です。

制度の概要

人工透析を導入すると、ほとんどの場合「身体障害者手帳1級」の交付対象となります。
この手帳を取得することで、自治体の「重度心身障害者(児)医療費助成制度」を利用できるようになります。

助成内容

助成の内容は自治体によって大きく異なりますが、多くの自治体で保険診療にかかる自己負担分が全額助成(実質無料)されたり、1医療機関あたり1日数百円といった低額な負担で済んだりします。

重要ポイント

この制度は自治体ごとに運営されているため、制度の名称(例:「マル障」「福祉医療費助成制度」など)、対象となる方の所得制限の有無、助成される範囲(入院時の食事代は対象かなど)が異なります。
全国腎臓病協議会の資料にもあるように、詳細については、必ずお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で確認することが不可欠です。

国によるもう一つの支援「自立支援医療(更生医療)制度」

国の制度として、もう一つ知っておきたいのが「自立支援医療(更生医療)」です。
これは、身体の障害を除去・軽減するための医療費の自己負担を軽減する制度です。

制度の概要

身体障害者手帳を持つ方が、都道府県から指定を受けた医療機関で透析治療を受ける場合に利用できます。

役割と活用シーン

原則として医療費の自己負担が1割となり、さらに世帯の所得に応じて月額の負担上限額が設定されます。
多くの自治体では、前述の「重度心身障害者医療費助成制度」を申請する際に、まずこちらの「自立支援医療」を適用することが求められます。
自治体の助成制度に所得制限があり利用できない場合でも、こちらの制度によって負担を軽減できる可能性があるため、重要なセーフティネットとなります。

キーポイント:負担軽減の仕組み

ステップ1

まず「特定疾病療養受療証」で、月々の医療費の自己負担を1万円(または2万円)にキャップします。

ステップ2

次に「身体障害者手帳」を取得し、自治体の「重度心身障害者医療費助成制度」などを利用して、その1万円の自己負担分をさらに助成してもらいます。 この2段階の仕組みを理解することが、費用不安を解消する鍵となります。

【実践編】費用負担を最小化する!制度活用のための3ステップ・アクションプラン


制度について理解したところで、次に行うべきは具体的な行動です。
ここでは、読者の皆様が迷わず手続きを進められるよう、申請の順番に沿って3つのステップで解説します。

ステップ1:すべての土台となる「身体障害者手帳」を申請する

なぜ最初か?

前述の「重度心身障害者医療費助成制度」や「自立支援医療」、後述する「障害年金」や各種福祉サービスなど、多くの支援制度の前提条件となるのが「身体障害者手帳」です。
そのため、医師から透析導入の説明を受けたら、できるだけ速やかに手続きを開始することが極めて重要です。

手続きの流れ

書類の入手: お住まいの市区町村の「障害福祉課」などの担当窓口で、「身体障害者手帳交付申請書」と指定の「診断書・意見書」の様式を受け取ります。
医師への作成依頼: 通院している病院の主治医に、診断書・意見書の作成を依頼します。
書類の提出: 必要事項を記入した申請書、医師が作成した診断書、本人の顔写真(縦4cm×横3cm)、マイナンバーカード(または通知カードと本人確認書類)などを揃え、市区町村の窓口に提出します。

ステップ2:「特定疾病療養受療証」を申請する

なぜ2番目か?:医療費の自己負担を「月1万円」という上限に抑えるための必須アイテムです。
身体障害者手帳の申請と並行して進めることで、透析開始後すぐに医療費の負担を抑えることができます。

手続きの流れ

書類の入手: ご自身が加入している公的医療保険の窓口で「特定疾病療養受療証交付申請書」を入手します。(例:国民健康保険なら市区町村役場、協会けんぽなら年金事務所、会社の健康保険組合なら会社の担当部署)
医師の証明: 申請書には医師が証明する欄がありますので、主治医に記入を依頼します。
書類の提出: 記入済みの申請書と保険証などを、加入する医療保険の窓口に提出します。

ステップ3:お住まいの自治体の「医療費助成制度」を申請する

なぜ最後か?:この申請には、ステップ1で取得した「身体障害者手帳」とステップ2で取得した「特定疾病療養受療証」が必要になるためです。これら2つの証明書が揃ってから、最後の仕上げとして手続きを行います。

手続きの流れ

窓口の確認: 市区町村の障害福祉担当課や医療助成担当課に連絡し、重度心身障害者医療費助成制度の申請に必要なものを確認します。
必要書類の準備: 一般的には、申請書、身体障害者手帳、特定疾病療養受療証、健康保険証、本人名義の預金通帳(助成金の振込先口座)などが必要です。自治体によって異なる場合があるため、必ず事前に確認してください。
申請の実行: 必要書類を揃えて窓口で手続きを行います。審査後、「医療証」や「医療券」といった証明書が交付され、これを医療機関の窓口で提示することで助成が受けられます。

医療費だけじゃない!生活全体の経済的負担とそれを支える支援策


人工透析との生活は、直接的な医療費以外にも様々な経済的負担を伴います。
また、治療による時間的制約から、収入が減少してしまうケースも少なくありません。
ここでは、そうした生活全体の負担を支えるための重要な支援策について解説します。

見落としがちな費用:通院交通費

課題

血液透析のための週3回の通院は、交通費だけでも年間で見るとかなりの金額になります。
特に公共交通機関が不便な地域や、体調面で自家用車の運転が難しい場合、タクシー利用などで費用はさらにかさみます。

対策

多くの自治体では、身体障害者手帳を持つ透析患者を対象とした交通費助成制度を設けています。
内容は様々ですが、以下のような支援が一般的です。
タクシー利用料金の助成(福祉タクシー券の交付など)
公共交通機関(バス・電車)の割引
自家用車のガソリン代の一部助成
医療機関による無料送迎サービスの提供
これらの制度も、お住まいの市区町村の障害福祉担当課が窓口となります。
自治体ごとの助成制度について調べてみることをお勧めします。

見落としがちな費用:食事療法にかかる費用

課題

透析患者さんは、カリウムやリン、塩分、水分の摂取に厳しい制限が課せられます。
そのため、栄養成分を調整した「治療用特殊食品」(低たんぱくごはん、減塩調味料など)を利用することが多くなりますが、これらの食品は一般の食品よりも割高な傾向にあります。

対策

残念ながら、これらの食品購入費を直接助成する制度はほとんどありません。
しかし、確定申告の際に「医療費控除」の対象となる可能性があります。
医師の指示に基づいて購入した治療用特殊食品であり、その証明がある場合に対象となり得ます。
税務署や専門家への確認が必要ですが、購入時の領収書は必ず保管しておくようにしましょう。

最大の支えとなる「障害年金」という選択肢

制度の役割

医療費の負担を軽減する制度とは別に、病気やけがによって生活や仕事が制限される場合に、生活そのものを支えるために支給されるのが「障害年金」です。
これは現役世代でも受け取れる公的年金であり、透析患者さんにとって最も重要な経済的基盤となり得ます。
人工透析を受けている方は、原則として障害等級2級に認定され、障害年金の受給対象となります。
受給額の目安: 受給額は、初診日時点で加入していた年金制度や家族構成によって異なります。
障害基礎年金(国民年金): 2級の場合、年額816,000円(2024年度)。子の加算もあります。
障害厚生年金(厚生年金): 上記の障害基礎年金に加えて、それまでの給与(標準報酬月額)に応じた報酬比例の年金が上乗せされます。配偶者加給年金がつく場合もあります。
重要なポイント: 障害年金は、働きながらでも受給可能です。透析治療による身体的負担や時間的制約から、以前のように働けなくなり収入が減ってしまった場合でも、障害年金が生活を力強く支えてくれます。
経済的な不安から無理をして体調を崩す前に、この制度の活用をぜひ検討してください。
申請手続きは複雑で、初診日の証明など専門的な知識が必要な場合が多いため、年金事務所や社会保険労務士などの専門家に相談することをお勧めします。

ご家族の方へ:患者を支えるための心構えと相談窓口


ご家族の中に透析治療が必要な方が出た場合、患者さん本人だけでなく、支えるご家族にも大きな影響が及びます。 経済的な問題、生活の変化、精神的な負担など、様々な課題に直面することでしょう。 ここでは、ご家族が知っておくべきこと、できることについて解説します。

経済的な負担への備え

治療が長期にわたることを前提に、家計の状況を改めて見直し、将来のライフプランについて家族全員で話し合うことが大切です。 患者さんの就労状況の変化による収入減の可能性も考慮に入れ、どの制度を利用すれば家計への影響を最小限にできるか、一緒に考える姿勢が求められます。 ご家族も本記事で解説したような公的制度について正しく理解し、申請手続きなどをサポートすることで、患者さん本人の負担を大きく軽減することができます。

精神的なサポートと相談窓口

週3回の通院や食事制限など、透析治療に伴う生活の変化は、患者さんにとって想像以上のストレスとなります。 家族が精神的な支えとなることは何よりも重要です。 家庭が安らげる場所であるよう、時には病気以外の楽しい話題に触れるなど、患者さんが孤立感を感じないようなコミュニケーションを心がけましょう。 しかし、経済的な問題や心理的な悩みを、ご家族だけで抱え込む必要はありません。積極的に専門家や支援団体を頼ることが、問題解決への近道です。

医療ソーシャルワーカー(MSW)

ほとんどの基幹病院には「医療相談室」や「患者支援センター」といった部署があり、そこに医療ソーシャルワーカーが常駐しています。医療費や生活費、各種制度の利用方法について無料で相談に乗ってくれる、最も身近で頼りになる専門家です。まずはMSWに相談することが第一歩です。

患者会

同じ病気を抱える他の患者さんやそのご家族と情報交換をしたり、悩みを共有したりできる場です。経験者ならではの具体的なアドバイスや精神的な支えを得られる貴重なコミュニティです。

人工透析の費用と助成制度に関するよくある質問(FAQ)


ここでは、人工透析の費用や各種助成制度に関して、よく寄せられる質問とその回答をまとめました。

  • 人工透析にかかる費用は全体でどれくらいですか?患者の自己負担額は?

    人工透析の医療費総額は、血液透析で月約40万円、腹膜透析で30〜50万円が目安です。
    しかし、公的制度を活用することで、患者さんの自己負担額は月額1万円〜2万円程度に抑えられます。場合によっては、通院交通費や入院時の食事代などを除き、自己負担を実質ゼロにすることも可能です。

  • 血液透析(HD)と腹膜透析(PD)で費用は異なりますか?

    総額の目安は異なりますが、どちらも公的制度を適用すれば自己負担は月1〜2万円に抑えられます。

    • 血液透析(HD)

      週3回、医療機関での治療が一般的で、月額医療費は約40万円弱です。

    • 腹膜透析(PD)

      自宅で行うため医療機関への管理料は少ないですが、透析液や備品が加わり月30〜50万円が総額の目安です。別途、電気・水道代や廃液処理費が月5,000円〜1万円程度かかる場合があります。

  • 透析導入時にかかる「初期費用」はどのようなものがありますか?

    透析導入時には、ランニングコストとは別に手術などの「初期費用」が発生します。

    • 血液透析(HD)の場合

      腕に動静脈瘻(シャント)をつくる手術が必要です。医療費総額15〜20万円のうち、高額療養費制度適用後の自己負担は2〜6万円程度が目安です。

    • 腹膜透析(PD)の場合

      腹腔内にカテーテルを留置する手術が必要です。総額20〜30万円に対し、自己負担は3〜8万円ほどです。自動腹膜透析(APD)装置のレンタル料も月5万円前後かかりますが、医療費扱いのため自己負担上限内に収まることが多いです。

  • 人工透析の費用負担を最も大きく軽減する制度は何ですか?

    最も基本的かつ強力な制度は 「特定疾病療養受療制度」です。
    この制度により、保険診療の自己負担上限額が月額1万円(高所得者は2万円)になります。この受療証を医療機関の窓口に提示するだけで適用されます。

  • 月額1万円〜2万円の自己負担額をさらに軽減する方法はありますか?

    「特定疾病療養受療証」によって下がった自己負担額をさらに軽減、場合によっては実質無料にできるのが、お住まいの自治体が行う 「重度心身障害者医療費助成制度」です。
    人工透析を導入すると、ほとんどの場合「身体障害者手帳1級」の交付対象となり、この手帳を取得することで本制度が利用可能になります。

  • 国の公的制度として「特定疾病療養受療制度」以外に費用軽減策はありますか?

    はい、国によるもう一つの支援として 「自立支援医療(更生医療)制度」があります。
    身体障害者手帳を持つ方が、都道府県から指定を受けた医療機関で透析治療を受ける場合に利用でき、原則として医療費の自己負担が1割となり、世帯の所得に応じた月額上限額が設定されます。自治体の助成制度に所得制限があり利用できない場合でも、この制度で負担を軽減できる可能性があります。

  • これらの費用助成制度を利用するための具体的なステップは何ですか?

    費用負担を最小化するための3つのステップがあります。

    • 「身体障害者手帳」を申請する

      多くの支援制度の前提条件となるため、透析導入の説明を受けたら速やかに手続きを開始します。

    • 「特定疾病療養受療証」を申請する

      医療費の自己負担を月1万円に抑えるための必須アイテムです。身体障害者手帳の申請と並行して進めることで、透析開始後すぐに負担を抑えられます。

    • 自治体の「医療費助成制度」を申請する

      ステップ1で取得した「身体障害者手帳」とステップ2で取得した「特定疾病療養受療証」が揃ってから手続きを行います。

  • 医療費以外に、透析治療でかかる見落としがちな費用はありますか?

    はい、主に以下の費用が見落とされがちです。

    • 通院交通費

      血液透析のための週3回の通院は、年間でかなりの金額になります。多くの自治体では身体障害者手帳を持つ透析患者を対象とした交通費助成制度(タクシー券、公共交通機関割引など)を設けています。

    • 食事療法にかかる費用

      治療用特殊食品(低たんぱくごはん、減塩調味料など)を利用することが多く、これらは一般の食品よりも割高な傾向があります。購入費の直接助成はほとんどありませんが、医師の指示に基づく購入であれば医療費控除の対象となる可能性があります。

  • 透析治療による生活や仕事の制限で、収入が減った場合の支援策はありますか?

    はい、 「障害年金」という選択肢があります。
    これは病気やけがによって生活や仕事が制限される場合に支給される公的年金です。人工透析を受けている方は原則として障害等級2級に認定され、受給対象となります。働きながらでも受給可能であり、経済的な不安を軽減するための重要な基盤となり得ます。

  • 透析治療の費用についてどこに相談すればよいですか?

    最も身近で頼りになる専門家は、ほとんどの基幹病院に常駐している 「医療ソーシャルワーカー(MSW)」です。
    医療費や生活費、各種制度の利用方法について無料で相談に乗ってくれます。まずは通院している病院の「医療相談室」でMSWに相談することが第一歩です。

正しい知識と行動で、安心して人工透析と向き合おう

本記事では、人工透析にかかる費用と、その負担を軽減するための具体的な方法について詳しく解説してきました。もしあなたが、これからどうすれば良いか迷っているのであれば、まず取るべき具体的な第一歩は、通院している病院の「医療相談室」にいる医療ソーシャルワーカー(MSW)に相談することです。
「透析の医療費について相談したい」と一言伝えれば、専門家があなたの状況に合わせた最適な制度の活用法や手続きを、親身になって一緒に考えてくれます。
正しい情報を武器に、そして専門家のサポートを得ながら、経済的な不安から解放され、安心して治療と向き合う日々を送られることを心から願っています。

更新日:2025年12月9日