慢性腎臓病(CKD)について
これからの治療を考え、行っていくために、慢性腎臓病(CKD)について知り、自分の状態を理解しましょう。
腎臓はそら豆のような形をした臓器で、腰の上あたりに左右1つずつあります。1個の大きさは握りこぶしぐらいで、成人で約120~150gです。それぞれには血管がつながっていて、絶えず沢山の血液が送り込まれ、送り出されています。
腎臓には、私たちが生きていくために必要ないくつかの大切な役割があります。
<腎臓の働き>
・体の中の老廃物を除去する
・体の水分、塩分のバランスを一定に保つ
・血圧をコントロールする
・赤血球の造血を刺激するホルモンを出す
・骨の健康を維持する
腎臓病の種類に関わらず、腎臓に障害がある、または、腎臓の機能の低下が3か月以上続いている状態を「慢性腎臓病(CKD)」といいます。慢性腎臓病(CKD)は、腎臓が上記のような役割を徐々に失っていく病気です。
慢性腎臓病(CKD)が進行すると、自然に元に戻ることはなく、老廃物や余分な水分が排泄されず徐々に体内に蓄積していき、腎臓の機能が15%以下になると透析などの腎代替療法の検討が必要となる末期腎不全の状態となります。初期には自覚症状が少ないため、気づかないまま病状が進行してしまう場合も多いのが特徴です。
また、慢性腎臓病(CKD)があると、心筋梗塞、心不全、脳卒中など、心血管病を発症するリスクが高まるとも言われています。
症状は一人一人異なりますが、よくみられる症状には以下のようなものがあります。
- いつもより脱力感を感じたり、疲れやすい
- 手足がむくむ
- 息切れが起こる
- 食欲がなくなり、体重が減る
- 口の中で変な味がする
- 吐き気が起こったり、吐いてしまう
- いつものように眠れない
- 皮膚がかゆくなる
- 筋肉痛が起こったり、足がつったりする
- 皮膚がいつもより黒っぽくなる
気になる症状があれば、主治医に相談してみましょう。
慢性腎臓病(CKD)の原因となるさまざまな疾患があります。
- 糖尿病
糖尿病になると、インスリン不足によって血糖が上昇します。その結果、全身の血管が傷つき、徐々に慢性腎臓病(CKD)を引き起こすことがあります。
- 高血圧
高血圧があると心臓と全身の血管に大きな負荷を与えるとともに、腎臓の毛細血管にも損傷を与えます。腎臓が障害されるとさらに血圧が上がりやすくなるという悪循環に陥り、慢性腎臓病(CKD)を引き起こす可能性があります。
- 多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)
多発性嚢胞腎は先天性の疾患で、腎臓に液体で満たされた嚢胞が作られることで、腎機能が悪化し、最終的には慢性腎臓病(CKD)を引き起こします。
- 慢性糸球体腎炎
慢性糸球体腎炎は腎臓の非常に小さいフィルター(糸球体)が損傷し、糸球体の役目である老廃物や水分の除去ができなくなる腎臓病の一種です。このため、最終的には慢性腎臓病(CKD)を引き起こします。
上記のような状態などにより、慢性腎臓病(CKD)が進行すると、血液から老廃物や水分をろ過する機能が失われていきます。しかし、適切な治療や健康的な生活習慣に気を付けることで、生活の質を維持するよう心がけましょう。
糸球体ろ過量(GFR)は、腎臓の中にある糸球体がどれくらいの老廃物をろ過することができるかを示す値です。「mL/分」という単位ですが、おおよそ腎機能のパーセンテージに対応しており、GFRが75mL/分であれば、腎機能が健康時の75%程度と考えることができます。
日常診療では、より簡単に腎機能が評価できるよう、クレアチニン値と年齢、性別という三つの要素から計算されるeGFR(推算糸球体ろ過量)が幅広く用いられています。
慢性腎臓病(CKD)のステージ
※腎臓病の重症度は、上記のGFR区分以外に、原疾患や尿たんぱくの状態を合わせて評価が行われます。
※GFR区分「G1」「G2」においても、尿検査で異常が続くなど、CKDが疑われる場合があります。
参考:CKD診療ガイド2012(社団法人 日本腎臓学会 編)
食事療法について
- たんぱく質のコントロール
腎臓の働きが低下している場合、たんぱく質の取りすぎは腎臓の血管を傷つけます。また、体内に老廃物を蓄積することにつながりますので、たんぱく質を制限します。ただし、摂取不足は体重や筋肉の減少をもたらしますので、適切にとることも大切です。
- 塩分のコントロール
塩分を多く摂取すると喉が渇き、水分が欲しくなります。塩分のコントロールは適切な血圧維持の上でも重要です。
- エネルギーの確保
人間が生きていく上で、エネルギーは必要不可欠なものです。 食欲が乏しく、エネルギーの摂取が十分でないと、体に蓄えた脂肪や筋肉組織がエネルギーとして燃焼され、体重が減ってしまいます。毎日十分なエネルギー量を摂取することが大切です。
- リンのコントロール
リンは体内のカルシウムと結合して、骨や歯を丈夫にします。腎機能が衰えると、血中にリンがたまり、体はバランスを保つために骨からカルシウムを取り出すため、骨がもろく弱くなります。リンの取りすぎは血管を傷つけることにもつながります。従って、リンの摂取量を減らすことが必要です。
リンはたんぱく質が豊富な食品に多く含まれます。たんぱく質を食事から完全に取り除くことはできませんので、リンも同様に食事から摂取しないことは不可能です。そこで、医師が処方した薬剤を服用することになります。
- カリウムのコントロール
腎臓に障害があると、カリウムが体内に蓄積されてきます。血中のカリウム濃度が高くなりすぎると不整脈が起きたり心臓が止まることがあり、非常に危険です。
カリウムは、豆類、果物、生野菜に多く含まれています。
- 水分のコントロール
腎機能低下の段階によって、尿量の変動がみられます。
腎臓病の早期段階では尿中の毒素を体外に出そうとして多尿になりますが、一般的に腎不全状態が進行するに従い、尿量は減少して行きます。また、尿の出が悪くなると、水分が体内にたまり、むくみや息切れなどが起こることがあります。
食事がうまくできているかどうかの判断は?
食生活がうまくできているかの判断は、体重の増減、 血圧測定および血液検査を参考にします。定期的に血液を採取して、カリウム、リン、尿素窒素、およびカルシウムの濃度を測定します。塩分を取りすぎると体に水とナトリウムがたまる結果、体重が増加したり、血圧が高くなります。
食事療法の内容は病気の状態や年齢、活動の具合など、人それぞれで異なります。また、病気の進行具合によって、制限の内容もかわってきます。
主治医や管理栄養士に定期的に相談し、自分に合った食事療法を続けることが重要です。
食事療法を継続するコツ
たんぱく質を含まない食品を上手く利用する。
(例)たんぱく質を多く含む肉、魚、卵などは、たんぱく質を含まないこんにゃく、きのこなどと組み合わせて調理し、満腹感を得る。
調理や味付けを工夫して、おいしく食べる。
(例)あつあつのてんぷらをレモンで。
からし、唐辛子、わさび、生姜などの香辛料を活用する。
治療用特殊食品を活用する。
(例)たんぱく調整ごはん、でんぷんもち など
慢性腎臓病(CKD)を治療・管理していく間には、精神的につらく感じることもあるでしょう。そうした感情を持つことは、慢性疾患では当たり前のことであると受入れ、認める気持ちを持ち、日々の生活の中で、気持ちをできるだけ前向きに変えられるような機会を探してみましょう。
以下のような感情を感じることがあります。
- ショック
- 苦悩
- 拒絶
- 怒り
- 落ち込み
- 恐れ
- 罪の意識
- 悲しみ
- 受容
思い悩むことがあれば、主治医の先生や医療チームからの支援を受けてください。一人で悩むのではなく、そうした支援を最大限に活用して、質問をしたり、症状を報告したり、慢性腎臓病(CKD)について自ら学ぶといったように積極的に行動することが大切です。
ご家族や介護者も、精神的な支えとなってくれるでしょう。あなたの気持ちを伝えることで、新しい考え方を見出してくれたり、より前向きになれるように導いてくれるかもしれません。
当サイトでは、ご家族や介護者の方向けの内容も用意しています。