患者さんからのメッセージ
腹膜透析の情報誌「スマイル」
患者さんの生活ぶりなどを動画でご紹介します。
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。
当ビデオは、患者さんの主観に基づく内容・患者さん個人の経験によるもので、全ての方に該当するものではありません。
治療については、主治医にご相談いただきますようお願いいたします。
ビデオメッセージ
「仕事を続けたい」とみずからPDを希望
仙台市青葉区にお住まいの久保信男さん(60歳)は、福祉関連の宿泊施設で、予約管理やフロント業務、デイサービスの受け入れなど、多岐にわたるお仕事に毎日を忙しく過ごされています。
久保さんが腎臓の機能低下を指摘されたのは大学4年のとき。就職内定後の健康診断で腎臓に異常が発見されました。その後、15年ほどは不調もなく過ごしていましたが、30代後半のときに痛風に似た症状を起こし、腎臓病の治療が始まりました。「お医者さんからは、いずれ透析が必要になると言われていましてね。それから58歳のときに入院し、血液透析を勧められました」。透析治療への気持ちの準備はできていたものの、一方で「今の仕事と生活を続けたい」という強い思いがあったと言います。
そこで、身内や友人で透析をされている方に話を聞くなどして情報収集をしたところ、腹膜透析(PD)なら「身体が楽そう」、「仕事も続けられる」とメリットが大きく、自分にとって一番の治療法だと感じたそうです。こうして、久保さんは医師の紹介で仙台社会保険病院を受診し、現在の主治医である石山先生と相談の上、夜寝ている間に自動的に透析液の交換を行う、腹膜透析APDを導入しました。
「実際に使ってみると操作手順もわかりやすく、簡単で驚きました。最初は2、3回コールセンターに問い合わせをしましたが、今はすっかり慣れたもんですよ」。導入してからは、身体が軽くなり、以前より体調がよくなったと語る久保さん。「何より自分の時間がもてること。PDに出会えて本当によかったと感謝しています」と表情もほがらかです。
以前とまったく同じペースで仕事を継続
寝ている間にAPDを済ませ毎朝9時に出社すると、お客様の対応や従業員への指示に追われ、あっというまに時間が過ぎてしまうとのこと。夜間のAPDに加え、夕方に1回透析液の交換を行う久保さんですが、お仕事が一段落つく夕方5時頃に個室となっている執務室で行っています。「30分だけですから、休憩を兼ねて。ほっと一息つける時間です」。その後、ふたたび仕事に戻り、19時頃に終了。10時間におよぶハードワークをこなしています。
「PDを始める前と今では、仕事のペースはまったく変わっていません。デメリットやハンディはまったく感じないですね。私は定年を迎えているのですが、会社から延長の要請があって、今までどおり仕事を続けています。少なくとも65歳ぐらいまではやってほしいと言われているので、まだまだ元気に頑張ろうと思っているんですよ」。
家族と過ごす毎日を大切に過ごしたい
昨年3月の震災のときは、久保さんの職場も地震による設備の故障や停電などの被害を受け、大変な事態になりました。その際は、一時的に器械で行うAPDから、手動のCAPDに切り替え、1日4回の透析液交換を行いながら、お客様の対応を続けられたそうです。「お客様の誘導が最優先で、自分の体調を考えている暇もなかったんです。でも、手動でできたので身体は無事でした」と振り返ります。
写真:左から、青木麻奈美看護師、石山勝也先生、田屋恵子看護科長、木村朋由腎センター医長
久保さんのお仕事後の楽しみは、近所に住むお孫さんたちとの夕食。多いときには6、7人で食卓を囲み、奥さまのつくられた煮物や焼き魚など、ヘルシーな和食中心の食事をゆっくりといただきます。かけがえのない家族と楽しい時間を過ごすのが一番幸せなとき。お孫さんのことをお話しされる笑顔がとても印象的でした。
今後の目標は「やりがいのある今の仕事を続けながら、毎日すこやかに過ごす」こと。お孫さんの成長を楽しみに、仕事と治療を両立させながら、充実した日々を過ごしているご様子が伝わってきました。
ドクターからのメッセージ
仙台社会保険病院 腎センター
石山 勝也 先生
久保さんはご自分から腹膜透析(PD)を希望されて、私どもの病院に来られました。治療に対する積極的な姿勢があり、理解も深く自己管理もしっかりされているので、私たちも安心して二人三脚で治療にあたっています。我慢強い方なので困ったことや辛いことを溜めこまないよう、月1回の通院の際はスタッフでお声がけするよう心がけています。処方内容をうまく調整しながら、なるべく長く安定した状態を維持したいと考えています。