患者さんからのメッセージ
腹膜透析の情報誌「スマイル」
患者さんの生活ぶりなどを動画でご紹介します。
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。
当ビデオは、患者さんの主観に基づく内容・患者さん個人の経験によるもので、全ての方に該当するものではありません。
治療については、主治医にご相談いただきますようお願いいたします。
ビデオメッセージ
子どもと向き合う時間がとれるPD生活
大西雅子さん(39歳)は、35歳のときに腹膜透析(PD)を始め、現在も病院の検査技師として毎日元気に働いていらっしゃいます。大西さんの朝は早く、夜間の腹膜透析(APD)が終了して起床するのは5時半。出勤前にお弁当を作って朝食をすませ、ご主人と小学校5年生になる愛娘を送り出すため、超多忙な朝です。職場ではバッグ交換を、11時からの昼休みと15時に休憩時間をもらって行っています。その後勤務を終えて帰宅すると、再びお母さん業と家事をこなす生活を過ごしています。
25歳でIgA腎症と診断され、10年ぐらいで透析の可能性もあると聞いていた大西さんですが、やはり、透析には『人生おわり』のイメージを持っていたと言います。いよいよ透析が必要になった時、入院中の病院でPDの説明を受けました。PDを選択した理由と実際のPD生活について伺うと、「当時は娘が保育園の年長組とまだ幼く、治療に時間をかけられない、子どもと一緒に過ごす時間をもちたいとPDにしました。ただ、最初は器械を使わず、朝にもバッグ交換をしていたので、忙しい朝はまさに戦闘モードでした。APDに変更後は注液が終了した状態で起きられる設定になったので、朝は楽になりましたね」と笑顔で話してくださいました。5時半起きで楽だなんて、子育て中の母親らしいこのパワフルさに思わず頭が下がります。
バッグ交換時間も有効活用
仕事と育児、そして家事と大忙しの大西さんは、バッグ交換中の時間も有効に活用しています。「『チューブをつないだら、後は排液をしながら食事をしている』という方の記事を読んで、これだ! と思いました。バッグ交換をすませてから昼食をとると、昼休みの1時間は終わっていましたが、排液・注液をしながらお弁当を食べるようにすると、バッグ交換と昼食が同時に終わるので、残りを休憩時間として使えるようになったんです。もちろん、接続と切り離しの時は清潔に慎重にしていますよ」。家でのバッグ交換時には、娘さんの宿題を見たり、大好きな本を読んだり。こうして、バッグ交換の負担が少なくなったそうです。
自宅と病院を往復するだけの生活は嫌だから
大西さんの休日の過ごし方は、計画的で合理的です。土曜日は、娘さんのポートボールの練習に付き添うことが多く、練習後の父兄との食事会や飲み会にも積極的に参加するなど、お子さんのために使っています。
写真:担当医の和田晃先生
また日曜日は読書三昧の1日を過ごし、身体と心を休めて自分を癒す時間に当てているとのこと。途中、仕事をやめようとは思わなかったのですか? と伺うと、「体調が最もよくなかった透析導入直前に、主治医の先生から『腹膜透析をすれば今より体調はよくなるから、仕事をやめるのは少し待ってみたら』と言われましたし、病気治療のために自宅と病院を往復するだけの生活は嫌だと思ったので、仕事をやめようとは思いませんでした。夫も協力してくれていますし。それに子育ても自分が子どもに育ててもらっているという感じです。病気のおかげで、家族や職場の人たちに助けてもらっている、育ててもらっていることに気づくことができました」と明るい答えが返ってきました。
透析していることを自分でも忘れてしまうくらい、現在はご主人と娘さんと楽しく過ごしているという大西さん。旅行の思い出、お仕事のこと、「スマイル」を通じてメル友になったPD患者さんとの交流のお話などから、ステキなご家族やお友達に囲まれた、充実した日々が伝わってきました。これからしてみたいことは「国内旅行は家族で行っているので、今度はアメリカのワシントンDCの博物館に行ってみたい!」。ぜひ、実現させてくださいね。
ドクターからのメッセージ
国立病院機構 大阪医療センター 総合診療部
和田 晃 先生
大西さんは、30代と若いうえに仕事をなさっており、小さなお子さんがいたため、生活に時間的な余裕のできる腹膜透析(PD)を勧めました。また、保存期から食事や生活習慣の自己管理がしっかりできていたこと、残存腎機能を保持しやすいことを期待していらっしゃったのもポイントです。旅行など特別な日も、普段どおりの治療と、食事や血圧の管理を心掛ければ問題なく楽しめます。PDで自由になった時間を上手に使って、仕事や家事、趣味に活かしてください。