患者の達人

腹膜透析の情報誌「スマイル」

2023年スマイル春号 腹膜透析(PD)と共に自分らしく暮らす患者さんをご紹介します。

記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。
PDの処方は医師の判断に基づき行われます。また、「患者の達人」の記事には患者さん個人の感想・意見が含まれており、全ての方に該当するものではありません。

2023年スマイル春号 患者の達人

デイサービスや友達とのおしゃべりが楽しい!PDに変更して遊ぶ時間ができました

90歳とは思えないほど若々しくおしゃれな森井セツ子さん。親しみを込めて腹膜透析(PD)の機械を「お父さん」と呼び、毎日自分で治療を行っています。集中して5時間以上趣味の編み物や漢字パズルに取り組むという森井さんのPDライフをご紹介します。

森井 セツ子さん(90歳) PD歴:1年9ヵ月 かかりつけの医療機関:独立行政法人 地域医療機能推進機構(JCHO)神戸中央病院

デイサービスや友達とのおしゃべりが楽しい!

自分の時間を持ちたいとHDからPDへ変更

50歳代で受けた健康診断で、腎臓病が判明した森井さん。88歳のときに透析導入が必要と告げられ、血液透析(HD)を導入しました。「じっとしていることが苦手な性分で、4時間ほどベッドに寝ていなければならないHDが苦痛でなりませんでした。

写真:前列左から主治医の亀﨑先生、森井さん、娘さん、腎臓内科 診療部長の足立先生 
後列左から透析センターの看護師の成田さん、土井さん、師長の石橋さん、砂泊さん

自分の時間をつくって遊びたい、愛媛の生まれ故郷に帰りたいという気持ちが大きく、先生に相談してHDに比べて時間の自由が利くPDに変更することにしました」とPD導入の経緯を説明します。HDは嫌だったため、自分で治療を行うPD導入への不安は一切ありませんでした。

同居する娘さんは「当初、私はPD導入に反対でした。母にはPDの手技は難しいと考えていましたし、自宅だと急な体調変化にどう対応すればよいか心配でした。HDは通院こそ大変ですが病院で対応してもらえるし、通院の際にいろいろ相談できるので安心だと考えていたのです。しかし、愛媛に帰るという母の望みをかなえたい思いもあり、最終的には賛成しました」と振り返ります。 

2021年2月にPDを開始しましたが、最初は手技がうまくできず苦労したそうです。娘さんも「初めは誰にも相談できずしんどい日々を過ごしました。半年ほどすると母も慣れてきましたし、私も心配事を病院に相談できるようになりました。皆さん親身になって対応策を考えてくださり、とても助かっています。また、訪問看護師さんにも毎日来てもらい、支えていただきました。今はPDをやってよかったと思っています」と言います。現在では、たまに排液の処理を娘さんが手伝う程度で、ほとんど森井さん1人で治療を行い、訪問看護の回数も週に1回に減りました。

7時間半かけて自動車で念願の愛媛に帰省

森井さんの楽しみは週3回のデイサービスでマージャンや体操をすることと、週1回仲の良い友達夫婦の家に遊びに行きおしゃべりすることです。また、ときには友達と音楽会に行くことも。PDを導入した当初は1Lバッグを1日2回交換していましたが、現在は2Lバッグの1回交換に変更し、遊びの予定に合わせて治療時間を調整しています。「普段は朝8時にPDを開始し5時間ほどおなかにためてから排液していますが、デイサービスの日は帰宅後に開始して5時間後に排液するスケジュールに変更しています。私の生活は遊びを中心に回っているんですよ」と嬉しそうに笑います。

念願の愛媛への帰省は、2022年3月に1回、10月には2回も実現することができました。「自動車にPDの機械や透析液を載せ、7時間半かけて娘とその旦那さん、孫娘の3人が交代で運転してくれました。親戚や友達が瀬戸内海で取れたアジやイカを持ってきてくれて、さばいて食べたのがおいしかったですね。また暖かくなったころ訪れたいです」と森井さん。「腎臓は悪いですが、その他はどこも痛くないし体調も良好です。毎日300回の足踏みとベッドでの足上げ体操を欠かさず行っています。娘が薄味でつくってくれる料理はおいしくて、残さず食べていますよ。娘は本当によくしてくれます」と感謝の気持ちを口にします。

最後に「PDは自分の時間が取れる治療で、遊ぶこともできます。明るい気持ちで過ごせますよ」とのメッセージをくださいました。

ドクターからのメッセージ

JCHO 神戸中央病院 腎臓内科 医長
亀﨑 通嗣 先生

私が初めて森井さんにお会いしたときの印象は非常に若々しい方であり、思わず電子カルテの年齢欄(当時88歳)を二度見してしまったほどです。「もう一度、故郷の愛媛に帰省して美しい景色をゆっくり見たい」と話されていたのが印象的でした。それならばPDの方がいいのではないかとの考えがよぎり、既にHDを導入していましたが、あらためてSDMを行い、CAPDを始めることになりました。森井さんはPD手技もすぐに獲得され、今ではレスパイト入院の際に病棟看護師へPD手技に関する患者さん目線のコメントをいただくほどです。森井さんがPDを生活に取り込み、自分の時間を有意義に過ごされている姿を見ることは主治医としてこの上ない喜びであり、いつまでも元気に長生きしていただきたいと思っています。

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