患者の達人
腹膜透析の情報誌「スマイル」
2022年スマイル春号 腹膜透析(PD)と共に自分らしく暮らす患者さんをご紹介します。
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。
PDの処方は医師の判断に基づき行われます。また、「患者の達人」の記事には患者さん個人の感想・意見が含まれており、全ての方に該当するものではありません。
様子を見ながら30年、 健診を怠った間に腎機能悪化
高校生のときに尿検査で引っかかったものの当時は特に問題にならず、その後も30年ほどは健診をきちんと受け様子を見ながら過ごしていた小永さん。ところが、健診の項目からエコー検査が除外されたことをきっかけに、健診を受けるのをやめてしまいます。「腎囊胞があったので、エコー検査のために健診を受けていたようなものでした。エコーがないなら受けなくてもよい気になってしまって。体調が悪くなかったこともあり、そのまま5年ほど経過しました。
写真:スタッフの皆さんと。
左から3人目が吉延貴弘先生(主治医)、4人目が小永さん
そろそろまずいかもと思い健診を受けたところ、血圧が200を超えていてスタッフの間にどよめきが走りました」と話します。要精密検査で福井県立病院に紹介され、血圧コントロールのため入院することになりました。「先生から『あと1年放っておいたら命が危なかったね』と言われました」。
そして入院中に受けた腎生検の結果、高血圧で腎機能が悪化し、遠くない将来に透析を導入する可能性が高いことも判明しました。食事に気を付け、運動を行うなど腎機能低下を防ぐ生活に努めましたが、2年後の2020年夏に主治医から「そろそろ腎代替療法が必要」と告げられます。腎移植を考慮しつつも、通院や体への負担が少なく時間的余裕があるPDの導入を決心した小永さん。11月にカテーテルをおなかに埋め込む手術を受け、1日に3回バッグ交換を行うCAPDを開始しました。「高血圧もそうでしたが、『その検査値は本当に私のものなの?』と疑うほど、体調が悪いという自覚が全くなかったんです。腹膜炎は心配に思いましたが、自宅での治療や手技に対する不安はありませんでした」と余裕の表情です。
オンラインレッスンで毎日運動
2021年夏には、日中にバッグ交換を行うCAPDから寝ている間に機械で自動的に透析液を交換するAPDに変更し、生活がより楽になったと言う小永さん。オンラインレッスンでヨガやピラティス、ボールエクササイズなど運動三昧の日々を過ごしています。「もともとジムのプールでアクアビクスをしたり、スタジオレッスンのエアロビクスをしたりと運動が好きでした。コロナの流行もあり、PD導入後にジムはやめ、コロナ禍で盛んになったオンラインレッスンを利用しています。ジムまで行く手間もなく、自宅でできるためマスクをしなくてもよいのも楽です。だいたい1日に3レッスンをほぼ毎日受けていますね。あと、コロナ前は夏祭りでよさこいや民謡を踊っていたのですが、一昨年、昨年と中止になって踊れなかったので、次の夏祭りで踊るのを楽しみにしています」(小永さん)。
小永さんのもう1つの楽しみは、30分ほどの距離に住む三男のところに生まれた初孫に会うこと。「男の子ばかり3人を育てましたが、女の子は初めてでめちゃくちゃかわいいです。まだ2歳ですが、この子が結婚するまでは元気でいようという目標ができました。それだけでなく、ひ孫の顔も見たいという欲も出てきました。長男にももうすぐ子どもが生まれるんですよ」と笑顔で語ります。
最後に「最初に透析と聞いたときは人生終わったなと落ち込みましたが、今は明るく生きています。それに、PDは血液透析(HD)と比べて時間に余裕ができるため、有効に時間を使えるメリットがあります。実際、私は有効に使っています」と朗らかに話してくださいました。
ドクターからのメッセージ
福井県立病院 腎臓膠原病内科
吉延 貴弘 先生
2020年11月頃にPDを導入した小永きよみさん。導入後から約1年間私の外来に通院していただいています。小永さんがPDを選んだ理由としては、HDに比べて通院回数が少なくて済み、プールやヨガなど自分の趣味が続けやすいことでした。毎月の外来で小永さんと話をしていると毎日が非常に充実している様子を感じ、自分も頑張らねばといった気持ちにさせてもらっています。小永さんのようにPDをやってみて、そのメリットを日々実感されている患者さんも多いと思います。患者さんのライフスタイルに合った腎代替療法を今後も提案していきたいと思います。