患者の達人
腹膜透析の情報誌「スマイル」
2020年スマイル春号 腹膜透析(PD)と共に自分らしく暮らす患者さんをご紹介します。
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。
PDの処方は医師の判断に基づき行われます。また、「患者の達人」の記事には患者さん個人の感想・意見が含まれており、全ての方に該当するものではありません。
タイミングよくPDを始めて順調な経過
5年ほど前から主治医に『ゆくゆくは透析が必要になる』と告げられていたため、覚悟はできていた」と話す今井さんは、1年4カ月前に透析を始めました。当時、看護師から血液透析(HD)とPDの説明を受けたもののPDの知識はほとんどなく、実際に治療を行っている患者さんの話を聞きたいとお願いしたそうです。そして、快く引き受けてくれた患者さんに話を聞き、出口部を見せてもらったことでPDを選択しました。
写真:スタッフの皆さんと。
前列右から大田先生、今井さん
「その方から『PDにしてよかった』と聞いたことに加え、知り合いのHD患者さんが『針を刺すのが痛い』と言っていたこともあり、PDを選びました。それに、PDであればいろいろな活動ができると思ったので」と話します。
PD導入のための入院中、夜間に自動で透析液を交換するAPDで治療を行うことに決めました。機械操作の練習開始後、2日ほどでマスターした今井さんですが、「実は入院しているのが嫌になって、自信はなかったけどできると言って退院したんだ」と笑いながら打ち明けてくれました。「経験したことがない治療を始める不安はありましたが、やってみたらなんとかなりました。分からない点は電話で聞いたりしましたが、機械が全部やってくれるので、ほとんどお任せです」。
退院後の経過も順調で、「ベストなタイミングで始められたのかなと思っています。他の病気で診てもらっている先生にも『やるなら先延ばしにしない方がいい。体調が悪くなり動けなくなってから始めるとつらいから』と勧められていたので、体調も安定したまま、導入前と同じように生活できています」と話します。APDは23時から7時まで8時間行い、朝が早いときは前倒しで始めるなど調整しているそうです。
「楽しむ」卓球を続けています
高校の部活で始めた卓球を、定年退職後に本格的に再開したという今井さんの卓球歴は20年以上。数年前までは高知県代表の監督兼選手として各地で開催される卓球大会に出場し、何度も優勝してきました。現在、監督は退きましたが、週2日は市のスポーツセンターで卓球教室の先生として30人に教え、週2日1回2時間の自身の練習も続けています。「退院後、卓球はすぐに再開しました。先日の大会では3位で、みんなから『練習不足ですね』と言われました(笑)。以前は出るなら優勝したいと考えていましたが、今では楽しみたい気持ちが強いですね」と話します。
「何も特別なことはしていませんよ。普段通りの生活です」とPD治療を自然体で受け入れている今井さんですが、「腹膜炎には気を付けています。何事も起きてしまってからでは遅いので、事前の準備や用心を怠らないようにしています」と言います。卓球をするときにはお腹のチューブをテープで固定し、その上からサポーターで押さえ、汗をかいた後はシャワーで出口部を常に清潔に保っています。
多彩な趣味を持ち活動的な今井さんも、PDを始めてから宿泊を伴う遠出はまだしていないとのこと。『スマイル』で告知しているツアーの企画について知ると、「参加してみたいですね。それまでに恋人を見つけて一緒に行きたいです」と満面の笑顔で話してくださいました。
ドクターからのメッセージ
高知高須病院 院長
大田 和道 先生
今井さんは、2018年8月にPDを開始されました。療法選択に際しては、導入後も大好きな卓球を継続したいとの意向があり、そのために時間的な制約の少ないPDを選択されました。PD 開始後も試合や指導のため、高知県内外を飛び回る生活を維持できていらっしゃるとお聞きしています。APD「かぐや」の高知県第1号の患者さんで、開始当初はトラブルもありましたが現在は安定し、「シェアソース」(遠隔モニタリング)により毎日のPD 実施状況を把握できており、月1回の通院で、特に問題なく経過観察が行えています。私たちも、PDチーム一丸(One Team)で、今井さんのPDライフを支えていきたいと考えております。これからも一緒に頑張っていきましょう。