患者の達人

腹膜透析の情報誌「スマイル」

2019年スマイル冬号 腹膜透析(PD)と共に自分らしく暮らす患者さんをご紹介します。

記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。
PDの処方は医師の判断に基づき行われます。また、「患者の達人」の記事には患者さん個人の感想・意見が含まれており、全ての方に該当するものではありません。

2019年スマイル冬号 患者の達人

お客様の笑顔が励み。仕事も趣味もポジティブに

埼玉県桶川駅近くにあるエステ・化粧品販売店は、明るい白色の壁に囲まれたアットホーム感あふれる居心地の良い空間。心と体をリフレッシュしたいお客さんが訪れています。このお店を切り盛りするのは、エネルギッシュでポジティブな土田知己さん。将来はお店を大きくして、経営者になりたいと前向きな土田さんの腹膜透析(PD)ライフをご紹介します。

土田 知己さん(50歳) PD歴:10ヵ月、エステ・化粧品販売 かかりつけの医療機関:医療法人社団 中央白報会 白報会王子病院

スタッフの皆さんと。左から3人目が横山先生、4人目が土田さん、6人目が窪田先生

生きるためにはやらないすべはないと治療を受け入れ

13年前にお母様と同じ多発性囊胞腎が判明した土田さんは、それ以降4カ月に1回の定期検診を受けていました。しかし、2018年の初めにインフルエンザ罹患を契機としてクレアチニン値が上昇したことから、血液透析(HD)が必要と告げられました。「時間は取られるし、旅行もできない」と気持ちが落ち込み友達に話したところ、慢性腎臓病(CKD)の治療で著名なクリニックがあると教えてもらい、しばらく通院しました。

写真:スタッフの皆さんと。
左から3人目が横山先生、4人目が土田さん、6人目が窪田先生

しかし、病気の進行を止めることはできず、やはり透析が必要となった土田さんですが、そこで勧められたのはHDではなく、PDでした。

「『お仕事もあるよね』とPDを勧められ、仕事のスタイルに合うと思って決めました。最初に透析と言われたときは拒否反応しかありませんでしたが、徐々に落ち着いて気持ちの整理ができ、生きるための治療をやらないすべはないと思えるようになりました」と当時の心境を語ります。また「ちょうど店を開業して軌道に乗ってきたところだったので、治療に踏み切れたのだと思います」と話します。

スーツケースに透析液を入れて家族でハワイ旅行に

PDを選択し、紹介された王子病院で夜寝ている間に機械が透析液を交換するAPDでの治療を開始した土田さん。「パソコンを扱うような感じで、操作は思ったよりも難しくなかったです。機械が次の動作を教えてくれるので楽に覚えられました」と言います。しかし、治療開始後はトラブルもありました。「カテーテルの出口が炎症を起こし、入れ替える手術を行いました。出口の状態がおかしいと思ったとき、大丈夫だろうと様子を見ていたらとても痛くなってしまって。それからは、ちょっとでも変化を感じたらすぐに病院に行くと決めています」(土田さん)。現在では出口部の状態も回復し、「導入後は普通の生活を送ることができています。導入前はすごく疲れやすくてすぐ横になりたかったり、むくみがひどくて靴が履けなかったりしたのですが、今はとても楽です」と微笑みます。

PD導入後も仕事のペースは変えていません。お客様の予約に合わせて、9時半から遅い日は21時ごろまでお店にいることも。「お客様1人1人との時間を大切にしています。『エステを楽しみに仕事を頑張る』とおっしゃる方もいて、施術後のお客様の笑顔は励みになりますね。家族も協力的で主人は家事を分担してくれますし、息子も透析液を温めるなど治療の準備を手伝ってくれています」。

仕事以外でも友達と一緒にライブや観劇へと出かけて大忙し。3月には家族4人でハワイ旅行も。「息子の大学卒業を記念して、結婚を控えた娘も一緒に行きました。透析液をみんなのスーツケースに分けて持ち込み、荷物検査に30分かかりましたが、とても楽しい旅行でした。また行きたいねと話しています」と仲の良いご家族の様子が伺えます。

最後に、「透析と聞くと死と隣り合わせのように思ってしまうけれど、PDであれば旅行もオシャレもできるし、体も楽になるので選ぶことを恐れなくていいと思います。私は自分でやってみたいと思ったことに何でもチャレンジしていきたいと思っています」と笑顔で話してくださいました。

ドクターからのメッセージ

王子病院 院長
窪田 実 先生

当院で腎不全治療の1つとしてPDを開始して30数年が経ちます。患者さんは透析が必要と告げられると、ショックと不安にかられます。われわれは、患者さんにHD・PD・腎移植の説明を行うとともに患者さんの声を聴かせていただき、その方に合った治療法を見つけていただいています。多くの方が、土田さんのように仕事や趣味などこれまで通りの生活を続けられるよう、スタッフ一同、支援しています。

内科
横山 由就 先生

土田さんは、腎不全を宣告されてから手術までの期間が短く、治療の受け入れに少し時間がかかりましたが、PDを導入すると決めてからは、気持ちを切り替え一生懸命頑張っておられます。特に素晴らしいのは、カテーテルの観察などで異変に気付くと、診察してほしいとすぐに連絡をくださることで、早期に治療できたこともあります。お仕事で活躍されていますので、できるだけ長く精力的に続けられるよう、こちらも力いっぱいサポートさせていただきたいと思っています。

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