患者の達人

腹膜透析の情報誌「スマイル」

2019年スマイル冬号 腹膜透析(PD)と共に自分らしく暮らす患者さんをご紹介します。

記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。
PDの処方は医師の判断に基づき行われます。また、「患者の達人」の記事には患者さん個人の感想・意見が含まれており、全ての方に該当するものではありません。

2019年スマイル冬号 患者の達人

島の電気の見張り番。緊急時でも困った人を助けたい!

愛媛県松山市の沖合に浮かぶ中島は、有人島9島を含む30島以上で構成される忽那諸島最大の島。みかんとトライアスロンで知られており、松山市の港(高浜港、三津浜港)とは高速艇やフェリーで結ばれています。中島で電気関連の仕事を一手に請け負っている松本博文さんに、離島での腹膜透析(PD)ライフについて伺いました。

松本 博文さん(68歳) PD歴:3年、電気関係 かかりつけの医療機関:愛媛県立中央病院

スタッフの皆さんと。左から2人目が茎田先生(主治医)、3人目が松本さん

仕事が続けられ緊急時に対応可能なPDを選択

糖尿病治療を20年ほど続けていた松本さんが腎臓病の指摘を受けたのは3年前のこと。糖尿病の影響で腎臓が悪くなる可能性については認識していましたが、症状が出てから対処すればいいだろうと思っていました。しかし、3年前にだるさを感じて受診したときには、駐車場から徒歩3分の病院の建物まで歩くのに休憩が必要なほど体調が悪化していました。

写真:スタッフの皆さんと。
左から2人目が茎田先生(主治医)、3人目が松本さん

透析の準備のためと言われて入院をした松本さんは、そこで検査値が悪く透析を始めなければならないと告げられます。「準備するだけのつもりですぐに透析とは予期していなかったので、もう仕事ができないとショックでしたよ。仕方がないと諦めたけど、血液透析(HD)とPDのどちらを選べばよいのか分からなくて迷ったね」と話します。そこで主治医の先生に依頼し、実際の患者さんを紹介してもらい、話を聞いた上でPDを選択しました。

その理由について、「仕事が続けられると思ったし、PDなら仕事の緊急事態のときには機械を一時停止して駆けつけることも可能だと思ったから」と説明する松本さん。電気工事に携わっている松本さんは、火災発生時には電源を停止させるため消防の次に現場に駆け付けるのだそうです。

また、HDは本島まで行かなければ治療を受けられないことやPDなら旅行ができると思ったこともPDを選択した理由だったと言います。愛媛県立中央病院でカテーテル手術を受け、寝ている間にバッグ交換を機械で行うAPDの手技を習得しました。現在では、その日の都合に合わせ22時半~23時にAPDを開始し、9時間治療を行う毎日を過ごしています。

喜怒哀楽を感じる「灘のけんか祭り」を楽しみに

中島で個人宅から公共施設に至るまで、電化製品を除き全ての電気関連の仕事を行っている松本さん。ここ数年は仕事量をセーブしているといいますが、夏には島の特産物であるみかん畑の水やりに使うポンプの電気工事で大忙し。また、緊急の仕事で夜中に呼び出されることもあります。忙しくてつらいときもありますが、困っている人を助けることにやりがいを感じ、島の電気の見張り番として活躍しています。

松本さんが仕事以外で楽しみにしているのは、兵庫県姫路市で毎年10月に盛大に行われる「灘のけんか祭り」。神輿をぶつけ合い、絢爛豪華な屋台の練り合わせなど、華やかさと勇壮さで多くの観客を魅了するお祭りです。松本さんは喜怒哀楽を感じられる「灘のけんか祭り」が大好きで10年以上通い続けています。地元の人々とも仲良くなり、毎年帰り際には「また来年」と言葉を交わし、涙が出るほど感動するひとときを過ごしているそうです。

また、相撲の経験を買われて、島の小学校からの依頼で相撲大会の1カ月前から実技指導を行い、大会では主審も引き受けています。相撲競技を通してチームプレー、人間関係の大切さを教え、島の青少年の育成に貢献しています。 最後に「自分は日中に自由が利くPDを選択してよかった。でも、分かりやすい説明が必要だね。これからの人にタイミング良く分かりやすく説明すれば、PDはもっと広まると思うよ」と、PDに対する思いも語ってくださいました。

ドクターからのメッセージ

愛媛県立中央病院 腎臓内科
茎田 奈央子 先生

松本さんは当科初診から約2週間で入院となり、疾患の受け入れが十分進まぬまま腎代替療法選択を迫られる厳しい状態でした。その間何度も自己語りを行い、「人の役に立ちたい」「仕事を続けたい」という人生の価値を明確化することができ、その手段としてPDを選択されました。しかし離島にお1人暮らし、しかもおしゃべりが始まると夢中になって手技練習がストップしてしまうキャラクター、APDを始めるとCAPDを忘れてしまうなどPD導入には苦戦しました。それでも1つ1つの問題をチームで解決することで、われわれチーム博文はレベルアップすることができ、PD大好き集団に変貌を遂げました。博文さんの笑顔がチームの原動力です。

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