なんでも相談室
腹膜透析の情報誌「スマイル」
腹膜透析(PD)に関する基本的なこと、日常生活での疑問や不安、今さら聞きにくい質問など、専門の先生がみなさまからの質問にお答えします。
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。
「なんでも相談室」では、はがきで寄せられた個々の相談についての回答を紹介しています。全ての患者さんに該当するものではありませんので、気になる症状がありましたら、主治医の先生にご相談ください。
2019年
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腹膜透析(PD)を始めてすぐに、運動のためと思ってお腹に液を入れたまま速歩をしたところ、鼠径ヘルニアになりました。このようなことはよくあるのでしょうか?手術直後だったことが関係しているのでしょうか?
(76歳 男性 PD歴2年4ヵ月)
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PD導入後の合併症として、鼠径ヘルニアは4~14%で見られると報告されています。一般人口における鼠径ヘルニアの発症率(1.5%)よりも多いです。腹腔内圧は、5~7mmHgとされ、12mmHgを超えるとさまざまな臓器に障害を起こすので治療が必要といわれています。1リットルの透析液を注入すると、腹腔内圧は、臥位で1.5mmHg、立位で2.0mmHg、坐位で2.1mmHgほど上がり、排便時のいきみや咳きこみなどによりさらに上昇します。鼠径管後壁が弱くなっているところに、腹腔内圧の上昇が加わることで鼠径ヘルニアを発症すると考えられています。
PD患者さんが腹圧の上がる運動(ゴルフ、テニス、スキーなど)をするときには、一時的にお腹を空にしてから行うことをお勧めします。鼠経ヘルニアを発症してもほとんどの場合、手術を受けることでPDが継続できます。
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貴生病院
副院長 門田 智香子 先生