なんでも相談室
腹膜透析の情報誌「スマイル」
腹膜透析(PD)に関する基本的なこと、日常生活での疑問や不安、今さら聞きにくい質問など、専門の先生がみなさまからの質問にお答えします。
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。
「なんでも相談室」では、はがきで寄せられた個々の相談についての回答を紹介しています。全ての患者さんに該当するものではありませんので、気になる症状がありましたら、主治医の先生にご相談ください。
2017年
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腹膜炎の症状として、排液の混濁をよく聞きますが、私の場合、パンなどの小麦製品や豆類を食べると排液が白くなり、1~2日で改善します。腹膜炎のときと、食事による混濁をどのようにして見分けたらよいのでしょうか?
(70歳 男性 PD歴1年1ヵ月)
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感染性腹膜炎の場合には、排液中に血液成分の白血球が増加します。尿試験紙によってこの白血球を特異的に検出することにより、ご自宅でも簡便に判別が可能です。排液が混濁し、尿試験紙によって白血球成分が陽性(通常2 分で紫色に変色)となった場合には感染性腹膜炎です。抗生剤使用前の長時間貯留の排液バッグは、細菌培養検査のために大切ですので、排液バッグをそのまま持って医療機関を受診してください。一方、食事による排液混濁では尿試験紙による白血球成分は陰性(変色なし)で、この排液混濁はリンパ管液の増流により腹腔内へ脂質成分が漏出したものと考えられています。また、排液混濁は降圧剤(ある種のカルシウム拮抗剤)によっても、特に排液量が多いときにまれに観察される場合があります。これらの排液混濁は一過性で、特別な治療を必要としません。
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順天堂大学 医学部附属練馬病院
腎・高血圧内科 准教授 井尾 浩章 先生