クローズup PDホスピタル
腹膜透析の情報誌「スマイル」
愛知県 社会医療法人 明陽会 成田記念病院
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。
早期に介入を開始し、保存期からPD手技を指導
同院の腎・糖尿科では、クレアチニンが2.0mg/dL以上または推算糸球体濾過量(eGFR)が29mL/分/1.73m2以下になると透析看護認定看護師が声をかけ、医師と連携して患者さんのマネジメントおよび腎代替療法の説明を開始します。「該当する患者さんとご家族には、まず腎臓病教室に参加していただきます。腎代替療法の説明は、まず集団で開始し、検査値が悪化したら個別にお話しする形に切り替えて何度も行います。保存期の早い段階から情報を提供することで患者さんが考える時間をつくり、納得して選択ができるよう支援しています」と話すのは血液浄化センター主任で透析看護認定看護師の山本美和さん。クレアチニン3.0mg/dL以上またはeGFR 19mL/分/1.73m2以下に進行するとPDの疑似体験や手技の練習を開始し、誰でもPDを選択できるよう月1回PD室で手技の指導を行います。
また、同院ではPD講習会を年に3回開催しています。実際にPDを行っている先輩患者さんの話を聞くことができるため、毎回満席になるほど好評です。副院長の大林孝彰先生は「PDを始めて2年ほど経過した患者さんにご自身の体験を披露してもらっていますが、良いことだけでなく悪いことについてもお話しいただいています。当初は年に1回の開催でしたが、希望者が多く3回に増やしました」と説明します。PD診療を行っていない周辺施設に通院している患者さんも受け入れています。
腎代替療法の選択においては、希望する患者さん全てに対しPD導入を検討している同院。他院でPDを断られた患者さんにも工夫してPDを導入しています。そうした患者さんに長く続けてもらうために、訪問看護などで支援体制を整えています。さらに、同院ではPDの外来導入を積極的に進めています。「カテーテルの埋め込み手術も基本は1泊2日の入院のみとし、退院後外来で1週間PDの手技を練習してもらうことで問題なく導入できています。また、80歳以上の高齢者には1バッグから開始し徐々にバッグ数を増やすインクリメンタルPDを採用するなど、生活環境の変化が少ない方法を取っています。当院のPD選択率が高いのは、患者さんの希望を拒まないことに加え、こうした取り組みも大きいといえます」(大林先生)。
スクリーニング検査を実施し、認知症による離脱を防ぐ
同院では、PDを長く継続してもらうためにさまざまな工夫をしています。例えば、診察の待ち時間を使って管理栄養士が食塩感受性テストを実施し、栄養指導に活用しています。また、半年ごとに軽度認知障害(MCI)を検出するスクリーニング検査「MOCA-J」を受けてもらい、認知症による緊急離脱を防いでいます。さらに、同院独自の出口部感染の定義を作成し、スコア化してケアや介入に役立てるなど、感染予防対策にも力を入れています。
一方、体液過剰に関してより厳格な管理が必要と考える腎・糖尿科部長の小林直人先生は「塩分や水分管理が十分でない患者さんに対し、その人の残存腎機能に合わせた管理ができるような取り組みを実施したいと考えているところです」と言います。大林先生は「現在、蒲郡市の透析施設および腎臓内科専門医の開業医と連携し、出口部感染や腹膜炎など緊急時の対応は当院で行う形でPD患者さんの日ごろの管理をお願いしています。今後は連携施設のさらなる拡充を目指しています」と連携強化への思いを語ります。
最後に読者のPD患者さんに向けて、大林先生からは「健やかに1日でも長くPDライフを満喫してください」、山本さんからは「やってみるとよいこともたくさんあるので、PDをやりたい方はぜひ気楽にトライしていただきたいです」、小林先生からは「私たちと一緒に内服薬の管理や適切な体液管理を行い、PDを長続きさせましょう」とのメッセージをいただきました。