クローズup PDホスピタル
腹膜透析の情報誌「スマイル」
佐賀県
佐賀県医療センター好生館
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。
2020年8月にPD診療を開始
同館に外来通院している慢性腎臓病(CKD)の患者さんは400〜600人と多く、毎年50〜60人の方が透析を開始しています。「患者さんやご家族が納得して治療に取り組んでもらえることを基本とし、それぞれの患者さんの背景まで考慮したオーダーメイドの治療を提供できるよう、患者さんに寄り添うことを第一に心がけています」と話すのは腎臓内科部長の中村恵先生。腎臓病の啓発活動にも力を入れ、患者さんや病診連携をしている開業医向けの講演会を開催しています。コロナ禍にある現在は、WEB講演会やSNSを利用した動画配信、地域のケーブルテレビでの番組放映など、工夫を凝らした啓発活動を続けています。
同館では腹膜透析(PD)診療を2020年8月に開始しました。腎臓内科医長の松本圭一郎先生は「それまではPDを希望される場合は他院にお願いしていましたが、患者さんが望む治療を提供できるよう当館でもPD診療を始めることにしました。ちょうどコロナが蔓延し始めたころで大変でしたが、看護部の全面的な協力もあり、半年ほどかけて準備を行い、現在では25人のPD患者さんを診ています。これまでも腎代替療法選択時にPDの説明はしていましたが、実際にPD診療を始め、実感をもって患者さんにお話しできるようになったと思います」と説明します。看護師の大坪千夏さんは「ほとんどのスタッフがPDの経験がない状況でしたが、松本先生の話を聞いてPDは必要な治療だと理解し、みんなの共通認識になりました。それからは研修に参加したり、勉強会を開いたりして徐々に体制を整えました」と語ります。
「外来から始める退院支援」で療養環境を整備
PD診療開始後は、腎代替療法選択時に病棟看護師も説明に参加するようになりました。これに伴い、患者さんと一緒に考える時間がより取れるようになったことから、さらに支援を充実させています。「PDを選択した患者さんには、『外来から始める退院支援』と名付けた取り組みを実施し、導入に向けた入院の前からご自身やご家族にPDライフをイメージしていただき、一緒に療養環境を整えるようにしています。この取り組みにより、入院期間の短縮や、多職種や地域との連携が取りやすくなるなどの効果を感じています」と病棟看護師長の金原直美さんは話します。
「多職種カンファランスで情報共有し全員が同じ方向を向いて取り組んでいます。また、以前からCKDの病診連携を行っていたことと、ソーシャルワーカーの協力もあり、PD診療でも周囲の施設からの協力を得られています」(中村先生)、「館内での協力はもちろん、他施設との連携により治療の主軸である患者さんやご家族の支援・指導に力を入れることができています」(腎臓内科・水田将人先生)と話す通り、院内の多職種だけでなく訪問看護ステーションや地域の医療機関との連携によって、さまざまな支援を必要とするPD患者さんを支える体制が整えられています。
最後に、皆さんからPD患者さんに向けてメッセージをいただきました。「決して孤立せず、社会に所属した状態で治療が受けられるよう環境を整えたいと日々考えており、患者さんとともに歩んでいければと思います」(中村先生)、「困ったことがあれば自分だけで悩まず、ご相談いただければと思います。また、気軽に相談できるような施設になりたいと考えています」(松本先生)、「PDは患者さんが主体となる参加型の治療です。医師、看護師など多職種みんなで治療を支援していきたいです」(水田先生)、「望んで選択した治療を安心して在宅で行えるように支援したいです。その人らしく生活できるよう、患者さんと考えていけたらと思います」(金原さん)、「PDをやってよかったという嬉しい言葉をたくさんいただいています。嬉しいことも不安なことも共有し、私たちも勉強させてもらいながら療養生活を支援したいです。一緒に頑張りましょう」(大坪さん)。