クローズup PDホスピタル
腹膜透析の情報誌「スマイル」
群馬県 医療法人社団 日高会 日高病院
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。
コロナ禍で腎臓病教室に代えて YouTube動画を配信
同院では患者さんの希望に合わせ、寄り添う治療を行うことで満足度の向上につながる医療を提供しています。「与えられる医療だけでなく、患者さんご自身が参加し理解し努力して得られる結果も満足につながると考えており、まずは腎臓病を理解してもらうことから始めます。その際、患者さんの不安についても一緒に解決できるよう、話をしやすく明るい雰囲気を心がけています」と話すのは、同院腎臓内科/平成日高クリニック透析センターの溜井紀子先生。
腎臓病の啓発に力を入れている同院では、医師、看護師、薬剤師、栄養士、メディカルソーシャルワーカー(MSW)などの多職種による腎臓病教室を毎月開催。コロナ禍においては公式サイト上でYouTube動画を配信する形にいち早く切り替え、啓発を継続しています。また、一般向けには商業施設での腎臓病教室を年2回開催。ミニレクチャーやクイズ、試食会、体験検査などを通して腎臓病の基礎知識や健診の重要性を広め、早期発見・早期治療へとつなげてきました(コロナ禍により一般向けは現在休止中)。
また腎代替療法については、知ることが不安軽減につながると考え、腎不全早期の段階から外来で少しずつ情報提供を行っています。近い将来、腎代替療法が必要になる患者さんに対しては、推算糸球体濾過量(eGFR)30mL/分/1.73m2程度を目安に腎代替療法選択外来受診を案内し、Shared Decision Making(SDM:共同意思決定)の手法を用いて、医師、看護師、患者さんとご家族が一緒にどの治療法が最も適しているかを考えていきます。医師が現在の腎臓の状態と各治療法(HD、PD、腎移植)について説明し、看護師が人生の目的や今後やりたいこと、楽しみ、不安などを聞き取り、希望に沿った治療法を提案します。「笑顔で本音を引き出すなど、看護師はよくやってくれていて、一緒に決めて一緒に治療していくというスタンスで臨んでいます。また、腎代替療法選択外来にはご家族も同席していただくようにしています。ご家族との間に医療者が入ることで情報が共有でき、患者さんとご家族の考えを擦り合わせる場にもなっています」(溜井先生)。
保存期からのPD外来通院で PDライフをイメージ
腎代替療法としてPDを選択すると決めた患者さんには、その時点から通常の保存期外来ではなく、PD外来に通院してもらっているという同院。保存期の治療を行いながら、手技の練習などPD開始に向けて準備し、最適な時期に導入できるように心がけています。PD外来では通常の外来より時間が確保できるため、不安な事柄や導入後の生活について相談でき、導入後のPDライフもイメージしやすくなります。
また、多職種(医師、外来看護師、病棟看護師、栄養士、MSW、訪問看護師)が集まるPDカンファランスは、PD患者さんの情報を共有し、円滑なPD導入を支援するだけでなく、定期的に出口部感染を評価し原因を追究することで出口部感染率低下を実現させるなど、治療の質の向上にも役立っています。一方、自宅での治療をサポートしているのが、訪問看護ステーションとの連携です。退院時には外来看護師とともに自宅を訪問し、PDを行いやすい環境づくりを支援しています。さらに同院では、施設入所中の患者さんのPD導入にも尽力。入所施設での勉強会や研修を行うなどサポート体制を整え、施設入所中の患者さんがPDを希望した場合にも対応してもらえるよう、連携の強化を図っています。
最後に溜井先生と日高病院のPDチームの皆さんよりメッセージをいただきました。「PDは拘束されず、やりたいことを優先できる治療です。自分の生活の一部となるよう上手に組み込んで、元気に楽しく過ごしてほしいです。毎月の外来受診を楽しみにしてもらえるよう話しやすい環境を心がけています。遠慮せず声をかけてください」。