クローズup PDホスピタル
腹膜透析の情報誌「スマイル」
大阪府 日本赤十字社 大阪赤十字病院
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。
療法選択外来を開設後、PDを選択する患者さんが増加
同院では、腎不全保存期の段階から地域のクリニックと密接に連携を取り、早い段階で患者さんへの働きかけを行っています。「地域連携パスを使い、腎臓病患者さんの早期発見に努めています」と語るのは、院長補佐兼腎臓内科主任部長の八幡兼成先生です。現在は新型コロナウイルス感染症の蔓延もあり、保存期の患者さんに教育を行うことが難しい状況となっていますが、同科医長の西岡敬祐先生は「直接、私たちが指導を行うのは難しい状況ですが、地域の先生方に慢性腎不全(CKD)に関する資料をお渡しし、連携して患者指導に当たっていただいています」と説明します。
一方、コロナ下でも同院では腎臓病教育入院による患者指導は続けています。腎臓内科医長の古賀健一先生は「年間80人ほどに5日間の入院期間中に、腎臓病について学んでいただいています。教育入院のプログラムの1つに腎代替療法に関する講義を組み込み、腎機能低下が進む前に腎代替療法について知ってもらう機会をつくっています」と話します。
また、2020年8月には療法選択外来を開設。看護師が中心となり、腎代替療法について患者さんに説明する場を設けました。「血液透析(HD)、PD、腎移植の3つの治療法について、1時間ほどかけて詳しく説明しています。同時に、患者さんの生活スタイルや今後やりたいことなどを聞き取り、患者さんがご自身に合った治療法を選択できるよう支援しています。PDや移植について興味を持たれる患者さんも多く、療法選択外来の開設後はご自身の生活スタイルに合わせPDを選択する方が増えました」と看護師係長の本多真弓さん。療法選択外来開設前はPDを選択する患者さんは年間2人ほどだったのが、開設後は10人を超えるようになったそうです。
「医師が説明すると医学的な話が中心になりがちですが、看護師が生活面を具体的に説明することで透析後の生活がイメージしやすくなったのだと思います。生活面も含めて十分な情報提供をすると、PDや移植を選ぶ人が増えると感じていますので、今後も患者さんと一緒に、適切な治療を決めていけるよう努力したいと思っています」(八幡先生)。
腎臓内科全員がPD診療に対応
療法選択外来の開設によりPD患者さんが徐々に増加してきた同院では、看護師が自主的に勉強会を開いて管理方法を統一したり、誰でも同じように患者さんへの対応ができるよう申し送りや情報伝達の方法を工夫したりしています。
腎臓内科の医師は研修医を含め全員がPD診療に対応できる体制を整えています。また、PD患者さんのさらなる増加に備え、地域のクリニックや訪問看護ステーションとの連携も視野に入れています。
最後にPD患者さんに向けて皆さんからメッセージをいただきました。西岡先生からは「PDは自分で行う治療ですが、患者さん自身が健康管理をすることで活動度が保たれ、治療を楽しみながら行っている方が多い印象を受けています。少しでも長く続けてもらえるよう全力でサポートしていきたいです」。本多さんからは「看護師には患者さんが大切にしていることをなるべく優先させてあげたいという思いがあります。患者さんがやりたいことを諦めずに充実した生活を送れるよう、お手伝いしていきたいです」。八幡先生からは「せっかく選んだ治療ですので、PDを長く続けられるよう一緒に頑張りましょう。一方でHDへの切り替えが必要なタイミングはきちんと見極め、PDにこだわるあまり体調を崩すようなことがないよう、適切な時期に切り替えを行うお手伝いも大事だと考えています」。古賀先生からは「PDをやってみてそのメリットを日々実感されている方も多いと思います。透析をしているから、大きな病気を持っているからとやりたいことを諦めるのではなく、主治医と相談しながらPDのメリットをできる限り享受してもらい、自分の好きな生活を続けていってほしいです」。