クローズup PDホスピタル
腹膜透析の情報誌「スマイル」
千葉県 独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)千葉病院
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。
半年後、1年後を考えた患者さん主体の療法選択
「日本の透析患者さんは高齢率が非常に高く、腎臓病以外に幾つもの病気を持っていることが多くあります」と話すのは院長の室谷典義先生。同院では、他院からの紹介例も含め管理が難しい透析患者さんの合併症に対し、高度な医療を提供しています。「近ごろでは末梢動脈疾患を合併する患者さんが増えています。フットケア外来では循環器内科、整形外科、形成外科と腎臓内科が一体となって治療を進め、血流が悪化した患者さんには血管内カテーテル治療を行うなど下肢切断の回避に尽力しています。またPDに関しては、最大の合併症である被囊性腹膜硬化症(EPS)を絶対に起こさないよう常に意識をして治療に当たっています」。
保存期腎不全患者さんの管理にも注力している同院。腎臓内科医長の杉原裕基先生は「第一の目標は透析導入を防ぐことです。塩分制限を中心とした栄養指導に力を入れ、腎生検も数多く実施しています。保存期の状態をできる限り長く維持し、たとえ腎代替療法を導入する場合でも日常生活動作(ADL)が良好な状態で移行できるよう取り組んでいます」と話します。
腎代替療法が必要になった場合には、医師と看護師から複数回にわたり時間をかけて説明を行います。看護師の三輪千枝さんは「患者さんとご家族がどのような生活や生き方を望んでいるかを尊重し、生活背景およびサポート体制などさまざまなことをお聞きします。また、実際にPDの機械や透析液に触れてもらう、DVDを活用するなど工夫をして患者さんに治療を実感してもらった上で、患者さんが納得されるまで何回でも説明を行います」と言います。
加えて、杉原先生は「半年後や1年後の状況まで見据えた選択ができるよう、さまざまな情報を提示します。例えば、歩行が困難になった場合はそれぞれの治療でどのようなサポートが必要となるのか、患者さんやご家族がどう過ごしたいのか、費用負担の面も含め、皆で一緒に考えます。血液透析(HD)で緊急導入したケースでも、落ち着いた段階であらためて腎代替療法を選び直してもらうこともあります」と説明します。
さらに、腎移植の専門知識と経験を持った医師や看護師から詳細な話を聞けることで、移植を目指す患者さんも少なくありません。
PDの継続をさまざまな取り組みで支援
在宅医療でQOLが維持しやすい点に加え、心臓への負荷が少ない点もPDのメリットと考えているという同院では、PD治療にも積極的に取り組んでいます。PD導入後の患者さんに対しては訪問看護ステーションと連携し、自宅での治療をサポート。出口部の観察などに加え、体重の変化や排液の異常といったトラブルに対し、医師の指示の下で透析液の処方の変更や抗菌薬の投与など、迅速に対応ができているといいます。「PDを始めた後、短期間でPDをやめざるをえなくなることは、患者さんにとっても、われわれ医療者にとっても大変残念なことです。そのため、カテーテル挿入術を工夫して感染を予防する、塩分制限を中心とした食事管理を積極的に行う、訪問看護師と連携しトラブルの早期解決につなげるなど、短期でのPD中止を回避できるように力を注いでいます。その取り組みがPDの普及にもつながると思いますので、今後、こうした情報を全国に発信していきたいと考えています」(杉原先生)
最後にPD患者さんに向けて、室谷先生からは「スタッフ一同、治療に全力を尽くしています。生まれ変わっても当院を受診したいと思ってもらえる病院を目指したいですね」、杉原先生からは「医療従事者も患者さんもみんなが良かったと思えるような治療を続けたいと思いますので、一緒に頑張っていきましょう」、三輪さんからは「患者さんの思いにできる限り耳を傾け、満足できるPDライフを送るためのサポートをしたいです」とのメッセージをいただきました。