クローズup PDホスピタル
腹膜透析の情報誌「スマイル」
岡山県 川崎医科大学附属病院
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。
PD患者さんと接することがエネルギーの源
長期の療養が必要となる腎臓病患者さんに対し、腎センターの看護師を含めた多職種のチームが全力で寄り添う環境をつくるため、同院では、透析患者さんや透析導入を控えた患者さんの診療は病院建物の10階に位置する腎センターで一括して行っています。腎臓内科部長/教授の佐々木環先生は「腎センターで外来を行うことは、患者さんのためはもちろん、医師やスタッフのモチベーション向上にもつながっています。患者さんが元気になっていく姿、喜んでくださる姿はエネルギーの源です」と話します。
同じく10階には栄養センターがあります。栄養士の橋本誠子さんは「診察が終わったタイミングを見計らって患者さんに声をかけ、栄養指導を行うケースも珍しくありません。同じフロアで状況がすぐに把握できることから、患者さんやご家族と話しやすい環境です」と言います。
このように、患者さんに寄り添う環境づくりは、患者さん、医師、スタッフの全員に好影響をもたらしています。
PD患者さんもチームの一員として活躍
さらに、同院では腎不全への進行を抑えることを目的として、月に1回、患者さん向けの慢性腎臓病(CKD)教室を開催しています。偶数月は保存期の食事療法や薬の管理について、奇数月は透析について学ぶことで、病気への理解を深め、食事や薬の重要性を知識として身に付けてもらうのです。
また、病状が進行して腎代替療法(HD・PD・移植)の選択を考慮する時期には、2泊3日の入院または通院で、より詳しい説明を行い、HDやPDの外来診療を見学する機会も設けています。腎臓内科医長/講師の角谷裕之先生は「PD外来では、通院中のPD患者さんと話す機会をつくり、出口部やバッグ交換の様子を実際に見てもらっています。導入を控えた患者さんにとって、PD患者さんの経験談は大変参考になるようです。自身も導入時に不安を抱えていた先輩PD患者さんたちは、今度は自分が役に立ちたいと、チームの一員として前向きに協力してくださっています」と話します。
臨床工学技士がPD診療に積極的に関わっていることも同院の特徴です。特に、夜間に自動で透析液の交換を行うAPDの機械に関しては、手配や準備に加え、メンテナンスやデータの解析、使い方指導に至るまで、臨床工学技士の役割は多岐にわたります。臨床工学技士の吉川史華さんは「PD患者さんに機械の使い方を説明することや外来診療時に話をすることは、とても楽しくやりがいを感じます。APDでの治療結果を医療従事者が遠隔で確認する遠隔モニタリングの設定など、臨床工学技士が関われる余地は少なくないと考えています。今後、データの解析などを進め、より患者さんにプラスとなるようフィードバックしていきたいです」と前向きに語ります。
患者さんのためを思い未来の治療に役立つよう基礎研究に尽力
同院は日本腹膜透析医学会のCAPD教育研修医療機関に認定されています。看護師主任の山中めぐみさんは「毎月第3水曜・木曜の2日間に、講義とPD外来見学という形で研修を行っています。当院の特徴である臨床工学技士のPD診療への関わり方の紹介や、HD食とPD食の食べ比べは、好評を博しています」と話します。
加えて、大学附属病院であることから研究にも熱心に取り組んでいます。角谷先生は「PDを選択された患者さんができるだけ長く元気に笑顔でPDライフを送ってもらえるよう、相談しやすい環境を整備し、チームで全面的にサポートしていきたいと思っています。また、研究機関として将来につながる研究を続けることも重要です。現在、腹膜の基礎研究を行っています。臨床応用につながる基礎研究の成果を1日も早く患者さんに還元できるよう、世界に向けて発信していきたいです」と未来にも目を向けています。