クローズup PDホスピタル

腹膜透析の情報誌「スマイル」

奈良県

奈良県立医科大学附属病院

記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。

奈良県立医科大学附属病院

新規に腎臓内科を立ち上げ治療の質を高め、さらなる向上を目指す

奈良県立医科大学附属病院腎臓内科は2018年1月1日に、循環器・腎臓・代謝内科より独立し、新たに開設されました。腎臓病の専門性を追究した腎専門医が多数在籍し、地域の医療機関との協力体制を整え、奈良県全域の慢性腎臓病(CKD)診療を担っています。同科で血液透析(HD)を導入する患者さんは70〜80人/年、腹膜透析(PD)を導入する患者さんは15〜20人/年ほどで、現在約60人のPD患者さんが通院しています。

写真:腎臓内科スタッフ一同前列左から2人目が江里口先生、4人目が鶴屋先生、5人目が鮫島先生

外来を担当する医師は全員PD診療が可能

腎臓内科教授の鶴屋和彦先生は、同科の理念について「腎臓病を検尿異常から透析・移植、最終的には終末期まで責任を持って考えながら診療しています。また、病気を診るのではなく、患者さんを診ること、つまり、病気だけを治すのではなく、人として幸せになれるように診療したいと考えています」と話します。

最近では、医療者と患者さんが互いに情報を提供し合って一緒に治療を決めていくSDM(Shared Decision Making:シェアード・ディシジョン・メイキング)という考えで治療法を決定する施設が増えてきています。同科でも医師からの説明に加え、看護師が複数回にわたって患者さんから生活背景や希望を聞き、各治療法の説明を行い、医療者と患者さんが一緒に治療法を決定しています。同科助教の鮫島謙一先生は「PDが特別な治療という意識はありませんので、PDを含めて分け隔てなく治療法の情報をお示しし、その患者さんが今後の生活をしていくに当たって、最も適した治療法を相談しながら決定していくようにしています」と言い、同じく助教の江里口雅裕先生は「PDには、良い状態で継続するための方法を話し合い考えていく過程で患者さん自身の自己管理の力が培われていくという側面があり、自己管理を学ぶツールとしても意味がある治療だと思っています」とPDに対する考えを語ります。「当科では特定の医師がPDを担当しているわけではなく、外来を担当する医師全員がPDの診療を行えますので、どの医師が担当になっても当たり前の治療として患者さんにPDを提供できています」(鶴屋先生)

教育研修医療機関となり教えながら学ぶ

同科では月に1回、医師をはじめ、透析室・外来・病棟の看護師、栄養士、理学療法士、移植コーディネーターが集まってCKDカンファレンスを開催し、多職種で情報を共有して質の高い診療を目指しています。

また、関西全域のPD診療の底上げと協力体制の構築を目指し、日本腹膜透析医学会の教育研修医療機関となった同院。CKDカンファレンスに参加する多職種のメンバーが関わり、月に5人ほどの看護師を受け入れて研修を行っています。「研修を提供している立場ではありますが、出口部管理の方法や手洗いについての説明などの情報を交換し、最も適した方法を柔軟に取り入れるようにしています。教えながら学ばせてもらうという形で診療の質を高めることにも役立っています」と鮫島先生は取り組みの成果を話します。

新しい取り組みを次々と実行PD診療の充実を目指す

同科では、最近、看護師が時間を取って患者さんの話を聞き、その情報を共有した上で医師が診療を行う「PD外来」を開設。継続的な細かい確認や教育が可能となりました。ゆっくり話を聞いてもらえると患者さんからも好評を得ています。また、PD導入時の退院に際し、病棟スタッフが患者さんの自宅を訪問する「退院時訪問」も新たに開始しました。訪問看護ステーションとも連携し、継続した訪問が可能となっています。鶴屋先生は「このような取り組みにより、腹膜炎の予防や体液の良好な管理をさらに徹底し、より質の高い診療を目指します」と展望を語ります。

最後に、PD患者さんに向けて、江里口先生からは「PD治療を通じて身に付ける自己管理は、HDや移植など、次の治療に進んだときにも役立ちます。そういう気持ちでPDに取り組んでもらえたらと思います」、鮫島先生からは「PDは特別な治療ではありません。多くの患者さんに選択してもらい、受け入れてもらえたらと思って診療に当たっています」、鶴屋先生からは「PDは患者さんの身体や生活に負担の少ない治療です。自己管理で、守るべきところを守って、より長く良いQOLを保ってほしいと思います」とのメッセージをいただきました。

奈良県立医科大学附属病院

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