クローズup PDホスピタル
腹膜透析の情報誌「スマイル」
愛知県 JA愛知厚生連 海南病院
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。
多職種間で情報を共有し個々の患者さんに合わせた診療やケアを提供
同院では、医師・看護師・訪問看護師・栄養士・ケースワーカーなどが連携し、腎臓病患者さんの診療に当たっています。
腎代替療法が必要な患者さんには、医師と共に血液浄化センターの看護師が時間をかけて説明を行い、入院中の手技習得は病棟の看護師がサポートし、お互いに情報を共有しながら、患者さんの状況に応じたケアや説明につなげています。また、退院後の外来診療では、看護師が生活の様子や困ったことなどを確認し、その情報が共有された状態で医師が診察に臨んでいます。さらに、管理栄養士も毎回外来に同席し、検査結果を基に具体的な食事の指導も行っています。腎臓内科代表部長の鈴木聡先生は「さまざまな職種のスタッフが同じ診察室で一緒に診察することで時間と空間が共有でき、患者さんに合わせた診療・指導が可能になりました」と話します。
多岐にわたる取り組みで患者さんを支援
さまざまな取り組みで患者さんを支援している同院では、療法選択の段階から工夫がなされています。腎代替療法選択外来では、冊子やDVDを使った説明だけでなく、患者さんやご家族が機械の操作を「体験」できる機会を提供。操作に難しい印象を持たれていても、実際に体験することで「これならできる」とPDを選ばれる方もいらっしゃるそうです。また、PDの導入時には、試験外泊をしてから退院する体制が取られています。試験外泊時と退院時には、訪問看護師が全ての患者さんに同行しますが、担当医師や看護師も可能な限り一緒に行き、ご自宅の環境を確認しています。「試験外泊で問題点がないか確かめ、直接アドバイスできることで、ご自宅の環境を整えた状態で退院してもらえるようになりました」(鈴木先生)。同様に、腹膜炎などの合併症による入院後にも自宅訪問を行い、導入から時間がたつうちに環境や手技が変わっていないか、確認する機会も設けています。
「継続して訪問看護を利用されている患者さんの様子は、『情報交換ノート』で訪問看護師と共有しています。また、訪問看護師との交流会を開催するなど、より連携を取りやすくするための取り組みも行っています」と話すのは血液浄化センター透析認定看護師の服部仁美さん。他にも、患者さんが困ったときに連絡ができる24時間対応の『PDホットライン』、患者さんとご家族や病院スタッフが一同に会し親睦を図る『PD患者・家族の会』、災害対策として『PD患者さんのための災害講習会』を開催するなど、同院の取り組みは多岐にわたっています。
教育研修医療機関に選出されPD診療の普及と質の向上に寄与
日本腹膜透析医学会の平成29年度CAPD教育研修医療機関として、東海エリア初の選出となった同院。外部の医師や看護師に対してPD診療に関する研修を提供しています。鈴木先生は「以前、他の教育研修病院を見学して、その取り組みに刺激を受け多くを学びました。今度はわれわれが学んだ事柄を地域に還元しようと考え、教育研修医療機関になることを目指しました。施設ごとで背景や診療の環境も違うので、それぞれの施設のニーズに応じた研修を提供するようにしています」といきさつを説明してくださいました。
最後に、PD患者さんとそのご家族に向けて、鈴木先生からは「PDのメリットは在宅ででき、ライフスタイルを崩すことが少なくて済むことです。悩みや不安があれば医師やスタッフに遠慮なく相談して、生活の中にうまく取り込んでください」、服部さんからは「その人らしい生活を続けてほしいと考えています。その生活が続けられるように、私たちはできる限りサポートしていきたいです」というメッセージをいただきました。