クローズup PDホスピタル
腹膜透析の情報誌「スマイル」
東京都 日本大学医学部附属板橋病院
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。
正確な検査から最新の治療まで腎臓病患者をトータルに支える
日本大学医学部附属板橋病院の腎臓・高血圧・内分泌内科は、その名前の通り、腎臓病をはじめ内分泌疾患、高血圧症、動脈硬化などの診療に当たっています。「正確な診断を行うための腎生検に始まり、慢性腎炎やネフローゼ症候群などのCKD治療、腎代替療法である血液透析(HD)や腹膜透析(PD)、急性血液浄化療法や血漿交換といった、腎臓病の患者さんを幅広く診られる診療体制を整えています」と話すのは主任教授の阿部雅紀先生。透析に伴うさまざまな合併症にいち早く適切に対応できること、小児科との連携で、小児の腎臓病患者さんが大人になっても同じ病院で診療を受けられることも、大学病院として院内に数多くの診療科を持つ同院の特長です。
現在、同科で透析を導入する患者さんは年間約100人。そのうち、およそ20人がPDを導入しています。「透析の導入に当たっては、医療者と患者さんが互いに情報を提供し合って一緒に治療を決めていく『シェアード・ディシジョン・メイキング(Shared Decision Making:SDM)』という考え方を取り入れています。医療者が治療の選択肢に関する情報を患者さんにしっかり提供し、患者さんから生活環境や背景を十分に伺った上で、医師だけでなく、看護師、患者さん、患者さんのご家族も交えて、どの治療がその人にとって最適なのかを一緒に決めていくという取り組みです。慢性疾患の看護に携わる外来看護師や透析看護を専門とする透析室の看護師を含めたチーム一丸で、患者さんの療法選択をバックアップしています」(阿部先生)。
看護師が患者さんの思いを聞き気持ちの整理・療法選択をお手伝い
療法選択への関わりについて、外来看護師の中村千恵美さんは「糖尿病性腎症の透析予防における外来看護師の関わりが、療法選択にも広がり、対象患者さんも糖尿病以外の方へと広がってきました。療養指導から透析予防、そして療法選択のそれぞれの段階で、チームで情報交換をしながら看護ケアに取り組んでいます」と話します。
写真:透析室スタッフの皆さん。中央が大塚恵子さん
また、外来主任で慢性疾患看護専門看護師の佐藤今子さんは「CKDの患者さんは、保存期以降の長い療養生活の中で、知らず知らずのうちに状態が悪化し、先生から透析の話を聞いていても、まだ先のことと、すぐには治療に向かうことができないケースも少なくありません。そこで、看護師が患者さんやご家族に病気に対する考え、生活の背景や病歴などについて伺いながら、透析導入に対して気持ちの準備が整うように働きかけていきます」と取り組みの意義を語ります。
透析療法の詳細は、透析看護の専門知識を持つ看護師によって説明が行われます。透析看護認定看護師の大塚恵子さんは「治療開始後の生活に関わることも含めて、それぞれの選択肢について詳しく説明します。患者さんが何を一番大切に考えているのか、仕事や日課などの生活状況も聞き、治療の特性と併せて、患者さんが自分で治療を選べるようにお手伝いをしています」と話します。
糖尿病患者さんでも高齢者でもPDはできる自分の生活に合わせた治療を
このような取り組みの結果、PDを選択する患者さんが増えているという同院。最後にPD患者さんに向けて、大塚さんからは「PD患者さんには活動的な方も多いので、PDをしっかり行って、旅行や趣味など、ご自分の時間を楽しんでいただきたいですね」、阿部先生からは「PDは残腎機能が保たれ、QOLの高い生活を維持できる治療法です。高齢の方でも、糖尿病性腎症の患者さんでもPDはできますので、自分の生活に合わせた治療を選んでほしいと思います。そのために、患者さん自身に納得してもらい、治療によって症状が良くなったことを実感してもらうことが大切だという理念の下、診療科全体で治療に当たっています」というメッセージをいただきました。