クローズup PDホスピタル
腹膜透析の情報誌「スマイル」
兵庫県 赤穂市民病院
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。
担当医が変わることなくスムーズな診療が可能
同院で腎臓病治療を担当するのは内科です。内科では、一般的な内臓疾患、神経疾患、糖尿病をはじめとする代謝疾患、腎疾患、血液や内分泌の疾患などの治療に従事しています。副診療部長・内科部長の高原典子先生は「透析が必要となる方には糖尿病の方が多いですが、当院では糖尿病も腎臓病も同じ医師が診察しています。高齢者の方は多重疾患をお持ちの方も多いですし、保存期から透析導入後まで担当医が変わらず、スムーズな診療を行えることは当院の強みといえると思います」と話します。
同院透析センターの透析ベッド数は40床、腹膜透析外来や処置スペースが広く、患者さんの昼食やご家族の待合スペースとしてラウンジなども併設され、落ち着いた居心地の良い空間となっています。腎疾患・透析治療に対する基本方針として、「地域中核病院の維持透析センターとして医療介護連携の拠点となる」「救急医療、他科患者さんの透析医療、災害拠点病院としての透析センターとなる」「保存期の患者さんやご家族向けの慢性腎臓病(CKD)教育および情報発信センターとして機能する」の3項目の実現を目指しています。
患者さんが選びたいと思った治療を適切に提供できるように
同院では、腎代替療法〔血液透析(HD)・腹膜透析(PD)・腎移植〕の選択に際して、患者さんの意向や生活背景を聞き取った情報を、医師・透析センターの看護師・病棟の看護師が情報を共有しながら、患者さんの希望に沿った選択ができるようにサポート体制を充実させています。「どの治療であっても、患者さんが選びたいと思った治療を適切に提供できるように準備しています。PDを選択した方には、治療効果をはじめ医療的な視点でしっかりと判断した上で、CAPDとAPDのどちらを選ぶかなどはできるだけ患者さんの希望に沿って考えます」と話すのは高原先生。
病棟看護師の谷口史織さんは「患者さんの背景やニーズは多様であるため、個々の患者さんごとにフレキシブルに対応できるよう心がけています。PD導入時の教育も患者さんの状態に応じて変えています」と言います。また、病棟主任看護師の坂上朝美さんは「特に高齢者の方では、ご家族にも一緒に話を聞いていただいています。また、いろいろな人から協力を得られる体制を整えながら、自宅で安心してPDが行えるように対応しています。在宅医療は何かあったときのバックアップ体制の構築が最も重要になるため、いつ電話が入ってもいつ来院されても、必ず誰かが対応できる体制を組んでいます」と話します。
さらに、栄養士による栄養相談が3ヵ月に1回の割合で行われています。HDのベッドサイドやPD外来待合室で、栄養士がよりおいしく食べるための栄養相談や間食のアドバイスなどを行っています。
PDは孤独な治療ではない
「PD治療では、患者さん自身、奥様・ご主人など、特定の誰かの負担が大きくなり過ぎないように、社会的な支援が得られるなら大いに活用してほしい」と高原先生が話す通り、同院では訪問看護師との連絡会を開催したり、デイサービスやショートステイにPD患者さんの受け入れを働きかけたりと、地域連携にも積極的に取り組んでいます。今後は、連携先を増やしていくこととともに、より円滑な連携に向けて、遠隔での治療管理ツールの導入にも期待を寄せています。
最後に、PD患者さんに向けて、坂上さんからは「自分の暮らしや人生観を大事にしながら、笑顔の絶えない生活をしてほしいです。そのお役に立てたらいいですね」、谷口さんからは「患者さんの笑顔が元気の源です。困ったときは私たちを頼ってください」、高原先生からは「PDは決して孤独な治療ではなく、周りには患者さんをサポートしたいと願うスタッフがたくさんいるということを覚えておい てください」とのメッセージをいただきました。