クローズup PDホスピタル
腹膜透析の情報誌「スマイル」
大阪府 大阪市立総合医療センター
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。
泌尿器科と腎臓・高血圧内科が連携して腎臓病患者をケア
同センターでは、泌尿器科と腎臓・高血圧内科が腎センターという1つのユニットを構成し腎臓病の治療に当たっています。
同センターにおける腎臓病治療について、泌尿器科副部長の浅井利大先生は「外科系である泌尿器科と内科系である腎臓・高血圧内科の連携が非常にスムーズに行われており、そのことが個々の患者さんに血液透析(HD)だけでなくPDや移植も含めて、自身にとってベストな腎代替療法を選択してもらえる環境につながっていると思います。保存期の診療は腎臓・高血圧内科で行いますが、透析や移植が必要になると、手術を行う泌尿器科がタイムリーに対応します。また、3年ほど前からは、PD導入後の外来において、泌尿器科と腎臓・高血圧内科が交互に診療する体制を取っています。そうすることで、内科、外科両方の視点から診ることができ、臨床的にも有効ではないかと考えています」と語ります。
両科の連携と『腎代替療法相談』でPDの選択が増加
年間約120名の透析導入があるという同センターでは、看護師による「腎代替療法相談」も行っています。「患者さんは、先生方から治療について説明を受けた後、詳しい説明を聞きに来られます。全ての選択肢について説明しますが、中にはPDや移植についてもっと知りたいと来られる方もいらっしゃり、70歳代以上の方でPDを選ぶケースも増えています」と紹介するのは、移植コーディネーターであり『腎代替療法相談』を担当する奥田友子さん。
写真:病棟スタッフの皆さん
実際、泌尿器科と腎臓・高血圧内科が積極的に連携するようになり、PDを選択する患者さんが増えているそうです。「従来から治療の選択肢についての説明は行われていましたが、両科が連携してPDを診療し始めたころからPDを選択する患者さんは増加し、以前は年間10名ほどだったPD導入が、昨年は約20名になりました」と浅井先生は話します。
さまざまな取り組みでPD治療を支える
こうして、PD患者さんが増えた同センターでは、訪問看護師との連携も行っています。「近隣の施設で、腹膜炎予防に大きな効果を示したと聞き、当院でも訪問看護師との連携を始めました。実際、早めに問題を発見できるため、対応の遅れが避けられます。現在は、PDを開始する全患者さんに利用を勧めていますが、特に高齢の患者さんでは、自宅での治療が不安な方や、家族に迷惑をかけたくないと思っている方も多いので、PD選択時の不安軽減にもつながっているようです」(浅井先生)。また、奥田さんは「高齢の患者さんでは手技や機械操作の習得が課題となることがあります。そこで、PDを希望される方には、療法選択の段階から、より時間をかけて説明し、患者さんの状況を把握して、入院病棟と連携したいと考えています。例えば、機械の操作は大丈夫そうだけどプライミングが難しそう、といったように具体的に伝えることで、より分かりやすい指導につながるのではないかと思っています」と、以前、病棟で導入時の患者さんと接していた経験を生かし、増加する高齢患者さんへの対策を検討しています。その他、他科の病棟にPD患者さんが入院することも想定して、看護師を対象に勉強会を開催したり、近隣施設からカテーテル挿入やトラブル時の対応を受け入れたりと、センター内はもとより、地域のPD治療を支えるさまざまな取り組みが行われています。
「 PD患者さんは、元気でQOLが高い方が多いと感じている」と話す浅井先生からは、「PDは患者さん自身が主体の治療です。腹膜炎や水分制限、食事に気を付けて、残腎機能をできるだけ維持し、PDを少しでも長く続けられることを願っています」と、また、奥田さんからも「PDを選択し、ご夫婦で充実した老後を送られているケースもあります。安心してPDライフが過ごせるよう私たちもお手伝いします」と心強い言葉をいただきました。