クローズup PDホスピタル
腹膜透析の情報誌「スマイル」
福島県 公益財団法人 ときわ会 常磐病院
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。
チーム医療、地域連携によってCKD患者さんを支える
腎医療に注力している常磐病院には、保存期の慢性腎臓病(CKD)約500名、血液透析(HD)約600名もの患者さんが通院しています。これらの患者さんを支えるのは多職種からなるチームで、名誉院長の川口洋先生をリーダーとした3名の腎臓内科医と、看護師、栄養士、理学療法士、薬剤師、MSWから構成されています。
腎臓内科ではCKD外来を開設し、CKDの進行抑制に力を入れており、特に栄養管理については、腎臓専門の管理栄養士8名による体制で、外来受診ごとにきめ細やかな指導を行っています。さらに、2015年11月からは、CKD外来に加え、4泊5日の教育入院を開始。入院期間中に疾患や栄養管理を中心に、腎代替療法などについても時間をかけて説明を行います。これにより、患者さんがCKDについて理解を深めることで、進行抑制につながると共に、腎代替療法が必要となった時には、納得して治療を選択できるようになればと期待しています。
また、地域連携の取り組みとして、開業医を対象とした勉強会を開催するなど、地域のCKD患者さんが早期から適切な治療が受けられるように開業医との連携体制作りに努めています。「CKDの地域連携は全国的に見ても端緒についたばかりです。試行錯誤の連続ですが、地道に進めていきたいと考えています」と川口先生は話します。
PDは多くの患者さんにお勧めしたい治療法
常磐病院では腹膜透析(PD)を選択する患者さんはまだ少ないのが現状ですが、「高齢の患者さんが増加する中、PDが必要とされる場面もさらに増えてくると思います」と川口先生は話します。「PDは身体的な負担や時間的な制約が少ないので、旅行や仕事の継続を希望される患者さんに適していると思います。実際80歳代で体操教室や旅行を楽しんでいる方もおられますよ」と荒井めぐみ外来看護師長。
写真:腎病棟とCKD外来の看護師の皆さん
さらに、内科外来看護主任の佐藤優子さんが「介助が必要な患者さんの場合、介護者のライフスタイル面でメリットにつながることもあります。仕事を持つ娘さんが、お母様の週3回の通院付添が難しく、夜と朝なら介助ができると、APDを選ばれたケースもあります」と述べるなど、同院では腎不全患者さんへより積極的にPDを紹介しようと考えています。
そのためにも、患者さんに、治療の選択肢についてより理解してもらうことが必要と、2014年2月より、看護師による腎代替療法の説明を開始しました。HD、PD、移植という選択肢の中から、生活に合った治療をじっくり考えて頂けるよう、冊子を活用したり、実際のPD患者さんの部屋の写真を見て頂いたりと、さまざまな取り組みがされています。「言葉による説明のみでは、PDは難しいという印象を持たれることもあります。そのためPDの説明の際は、カテーテルを装着したキューピー人形を使っています。具体的なイメージが湧くことで"自分にもできる"と思って頂けることが多いですね」と工夫を紹介してくださった内科外来看護師の和泉沙衣さんは、「いつも患者さんに安心して頂ける病院でありたい」と目標も話してくださいました。
佐藤看護師は「PDは自分らしい生活が可能な治療法ですので、多くの患者さんにお勧めしたいですね。患者さんから何を聞かれても答えられるように、努力していきたいです」、川口先生は「PDを導入している患者さんは、自分で医療に参加しているという意識をお持ちのためか、いきいきしておられるように感じます。同時に、高齢の方では、ご家族に負担がかかりすぎないような支援体制も必要だと思います」と患者さんへの手厚いサポートに余念がありません。荒井看護師長は「PD患者さんにはPDの利点を十分に生かして、前向きに人生を楽しんで頂きたいです。そして、いわき市へ旅行に来られて、PDで困ったことがあればどうぞ当院へ」とのメッセージを送ってくださいました。