クレアチニンについて

「クレアチニン」とは|数値の意味・対策について

健康診断や医療機関での検査で「クレアチニン」という項目を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
このクレアチニン値は、腎臓の機能が正常に働いているかを知るための重要な指標の一つです。
本記事では、腎臓病の文脈で「クレアチニン」について検索された方に向けて、クレアチニンとは何か、腎機能とどのような関係があるのか、数値が変動する原因、そして関連する検査や日々の生活で気を付けたいポイントなどを、専門的な情報を交えながら分かりやすく解説します。

クレアチニンとは

クレアチニンは、筋肉に含まれる「クレアチン」という物質が代謝された後にできる老廃物です。
クレアチンは、筋肉を動かすためのエネルギー源として利用され、その過程でクレアチニンが生成されます。
生成されたクレアチニンは血液中に入り、主に腎臓の糸球体(しきゅうたい)というフィルターのような組織でろ過され、尿として体外へ排出されます。
このため、血液中のクレアチニン濃度(血清クレアチニン値)を測定することで、腎臓が老廃物を適切に排泄する能力、つまり腎機能を評価することができます。
腎機能が低下すると、クレアチニンを十分に尿中へ排泄できなくなり、血液中にクレアチニンが蓄積して血清クレアチニン値が上昇します。

クレアチニンの基準値

クレアチニンの基準値は、性別や検査機関によって多少異なりますが、一般的には以下の通りです。

性別 血清クレアチニン値の
一般的な基準範囲(mg/dL)(*1)
男性 0.65~1.07程度
女性 0.46~0.79程度
  • 上記は成人の血清クレアチニン値の一般的な基準範囲を示しています。
  • この数値はあくまで目安であり、個々の状態や検査機関の基準によって解釈が異なる場合があります。必ず医師の診断を受けてください。

男性の方が女性よりも筋肉量が多いため、クレアチニンの産生量も多くなり、基準値もやや高くなる傾向があります。
また、年齢によっても筋肉量は変化するため、クレアチニン値に影響を与えることがあります。

参考情報源

(*1)日本臨床検査医学会 編. 臨床検査のガイドライン JSLM 2021: 18

腎機能とクレアチニンの密接な関係

腎臓は、体内の水分バランスの調整、血液中の老廃物の排泄、血圧のコントロール、ホルモンの産生など、生命維持に不可欠な多くの役割を担っています。その中でも、老廃物をろ過し尿として排泄する機能は、クレアチニン値と深く関連しています。

腎機能が低下するとクレアチニン値が上昇するメカニズム

腎臓の糸球体は、血液をろ過して老廃物や余分な水分を尿として排泄する役割を担っています。腎機能が低下すると、この糸球体のろ過能力が落ちてしまいます。その結果、本来であれば尿中に排泄されるはずのクレアチニンが十分に排泄されず、血液中に蓄積し、血清クレアチニン値が上昇するのです。
つまり、血清クレアチニン値の上昇は、腎臓のフィルター機能が弱まっている可能性を示唆しています。

クレアチニン値が基準値よりも低い場合

血清クレアチニン値が基準値よりも低い場合は、主に筋肉量の減少が原因と考えられます。加齢による筋肉の衰え、長期的な寝たきり状態、栄養不良、特定の筋疾患(筋ジストロフィーなど)などが該当します。また、妊娠中は循環血液量が増加するため、相対的にクレアチニン値が低くなることがあります。重度の肝機能障害でも、クレアチンを合成する能力が低下するため、クレアチニン値が低くなる場合があります。

クレアチニン値に影響を与える要因

クレアチニン値は腎機能だけでなく、様々な要因によって変動します。ここでは、クレアチニン値が上昇する原因と低下する原因について、より詳しく見ていきましょう。

クレアチニン値が上昇する主な原因

クレアチニン値が上昇する背景には、腎臓自体の問題だけでなく、他の要因も関わっている可能性があります。

主な原因 詳細・メカニズム
腎機能の低下 腎機能が低下すると、老廃物であるクレアチニンを排出できなくなり、血中濃度が上昇します。慢性腎臓病や急性腎障害など、さまざまな原因で腎機能の低下が起こり、クレアチニン値が上昇します。
慢性腎臓病(CKD) 糖尿病性腎症、高血圧性腎硬化症、慢性糸球体腎炎、多発性のう胞腎など、様々な原因疾患により腎機能が徐々に低下する状態。クレアチニンの排泄能力が低下し、血中濃度が上昇します。
筋肉量の影響 アスリートやボディビルダーなど筋肉量が非常に多い人、筋肉増強を目的としたサプリメント(クレアチンなど)を摂取している人は、クレアチニンの産生量が多くなり、腎機能が正常でも値が高くなることがあります。
食事の影響(一時的なもの) 肉類(特に赤身肉)を大量に摂取した後など、一時的にクレアチニン値が上昇することがあります。これは、肉に含まれるクレアチンが体内でクレアチニンに変化するためです。通常は一過性です。

出典

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クレアチニン値が低下する主な原因

クレアチニン値が基準値よりも低い場合も、その背景にある原因を理解することが大切です。

主な原因 詳細・メカニズム
筋肉量の減少 加齢、長期臥床、栄養不良(特にタンパク質摂取不足)、筋ジストロフィーなどの筋疾患により筋肉量が減少すると、クレアチニンの産生量が減少し、血中濃度が低下します。
妊娠 妊娠中は循環血液量が増加し、腎臓でのろ過量も増加するため、相対的にクレアチニン値が低くなる傾向があります。
肝機能障害(重度) クレアチンは主に肝臓で合成されるため、重度の肝硬変などで肝機能が著しく低下すると、クレアチンの合成能力が低下し、結果としてクレアチニン値が低くなることがあります。
食事の影響 極端な菜食主義やタンパク質摂取量が極端に少ない場合、クレアチニンの元となるクレアチンの摂取量が減り、クレアチニン値が低くなることがあります。

出典

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このように、クレアチニン値は様々な要因で変動します。
数値だけを見て一喜一憂するのではなく、その背景にある原因を理解することが重要です。

クレアチニン検査でわかること・わからないこと

クレアチニンを調べる検査には、主に血液検査と尿検査があります。
これらの検査から何がわかり、どのような限界があるのかを理解しておきましょう。

血液検査(血清クレアチニン値)

一般的に健康診断などで測定されるのが、この血清クレアチニン値です。
血液中のクレアチニンの濃度を調べることで、腎臓の排泄能力を評価します。
前述の通り、腎機能が低下すると数値が上昇する傾向にあります。

尿検査(尿中クレアチニン値、クレアチニン・クリアランス)

尿検査では、尿中のクレアチニン濃度を測定します。
一定時間の蓄尿(例えば24時間蓄尿)を行い、尿量と尿中クレアチニン濃度、そして血清クレアチニン値から「クレアチニン・クリアランス(CCr)」を算出することができます。
クレアチニン・クリアランスは、腎臓が1分間にどれくらいの血液をろ過してクレアチニンを排泄できるかを示す値で、より正確な腎機能評価に用いられることがあります。

クレアチニン検査の限界

血清クレアチニン値は腎機能の重要な指標ですが、いくつかの限界点も存在します。

早期の腎機能低下を見逃す可能性

腎機能がある程度低下しないと、血清クレアチニン値が基準値を超えてこないことがあります。つまり、軽度の腎機能低下の段階では、クレアチニン値だけでは異常を発見しにくい場合があります。

筋肉量の影響

前述の通り、筋肉量の影響を受けるため、同じ腎機能であっても、筋肉量の多い人はクレアチニン値が高く、筋肉量の少ない人は低く出る傾向があります。このため、クレアチニン値だけで腎機能を正確に評価するのは難しい場合があります。

このようなクレアチニン値の限界を補うために、次に解説する「eGFR(推算糸球体ろ過量)」が広く用いられています。

eGFR(推算糸球体ろ過量)とは

eGFR(estimated Glomerular Filtration Rate:推算糸球体ろ過量)は、血清クレアチニン値、年齢、性別を用いて、腎臓の糸球体が1分間にどれくらいの血液をろ過できているか(GFR)を推算する計算式、またはその値のことです。

なぜeGFRが重要なのか?

血清クレアチニン値は筋肉量の影響を受けるため、特に高齢者や痩せている方などでは、実際の腎機能よりもクレアチニン値が低く出てしまい、腎機能低下が見逃される可能性があります。eGFRは、これらの影響を考慮して算出されるため、より実態に近い腎機能を評価できるとされています。
慢性腎臓病(CKD)の診断や重症度分類にも、このeGFRが用いられており、腎機能評価における現在の標準的な指標の一つです。

eGFRの計算式

eGFRの計算式はいくつかありますが、日本人向けには以下の計算式が推奨されています。

日本人男性の場合

eGFR (mL/分/1.73m²) = 194 × 血清Cr -1.894 × 年齢-0.287

日本人女性の場合

eGFR (mL/分/1.73m²) = 194 × 血清Cr -1.894 × 年齢 -0.287 × 0.739

  • 血清Cr:血清クレアチニン値 (mg/dL)

この計算は複雑ですが、医療機関では自動的に算出されることが多く、またインターネット上にもeGFR計算ツールがあります。

eGFRの基準値とステージ分類(CKDの重症度分類)

慢性腎臓病(CDK)のステージ

eGFRの値によって、CKDステージが分類されます。

横にスクロールできます
GFR区分(mL/分/1.73m²) 腎機能の評価 CKDステージ 対策の目安
90以上 正常または
高値
G1 腎機能低下のリスク因子(糖尿病、高血圧など)の管理、定期的な検査
60~89 正常または
軽度低下
G2 腎機能低下のリスク因子(糖尿病、高血圧など)の管理、定期的な検査
45~59 軽度~
中等度低下
G3a 腎臓専門医への相談を検討。原因精査、合併症の評価と対策、進行抑制のための治療(食事療法、薬物療法など)を開始または強化。
30~44 中等度~
高度低下
G3b 腎臓専門医による管理が推奨されます。合併症(貧血、骨ミネラル代謝異常など)の管理、腎代替療法の準備も視野に入れる。
15~29 高度低下 G4 腎臓専門医による積極的な管理。腎代替療法(透析、腎移植)の具体的な準備と選択。
15未満 末期腎不全
(ESKD)
G5 腎代替療法の導入が必要な状態。
  • 腎臓病の重症度は、上記のGFR区分以外に、原疾患や尿たんぱくの状態を合わせて評価が行われます。
  • GFR区分「G1」「G2」においても、尿検査で異常が続くなど、CKDが疑われる場合があります。

参考

CKD診療ガイド2012(社団法人 日本腎臓学会 編)

eGFRの注意点

eGFRは非常に有用な指標ですが、万能ではありません。

筋肉量が極端に多い、または少ない場合

クレアチニン値を基にしているため、筋肉量が極端に多いアスリートや、逆に筋肉量が著しく少ない寝たきりの方などでは、eGFRの値が実際のGFRと乖離する可能性があります。

急速な腎機能変化

急性腎障害のように急速に腎機能が変化している場合には、eGFRが実態を正確に反映できないことがあります。

特定の薬剤の影響

一部の薬剤はクレアチニンの尿細管からの分泌に影響を与え、血清クレアチニン値を変動させることがあり、結果としてeGFRの値にも影響が出ることがあります。

これらの点を考慮し、医師は他の検査結果や臨床症状と合わせて総合的に腎機能を評価します。

クレアチニン値が高い(低い)と言われたら?

健康診断などでクレアチニン値の異常(高い、または低い)を指摘された場合、どのように対応すればよいのでしょうか。

医療機関での再検査・精密検査の必要性

まずは、指示に従い医療機関を受診し、再検査やより詳しい精密検査を受けることが重要です。一時的な変動である可能性も否定できませんが、背景に何らかの疾患が隠れている場合もあるため、自己判断せずに専門医の診断を仰ぎましょう。

原因に応じた対処法・治療法

検査の結果、クレアチニン値の異常の原因が特定された場合、その原因に応じた治療や対策が行われます。
特に、血液検査や画像診断、腎生検などの結果からクレアチニン値の上昇が腎機能の低下、すなわち腎臓病(慢性腎臓病の進行を含む)に起因することが確認された場合には、以下に示すような生活習慣の改善や薬物療法が重要となります。

  • 生活習慣の改善

    食事療法

    腎機能の程度や原因疾患に応じて、タンパク質の摂取量、塩分、カリウム、リンなどの摂取制限が必要になる場合があります。食事療法は自己判断で行わず、必ず医師や管理栄養士の指導のもとで行うことが重要です。

  • タンパク質制限

    過剰なタンパク質摂取は、老廃物の産生を増やし腎臓に負担をかけるため、制限が必要な場合があります。ただし、極端な制限は栄養不良を招くため、適切な量を守ることが大切です。

    塩分制限

    高血圧は腎臓病を悪化させる大きな要因です。塩分摂取を控えることで血圧をコントロールし、腎臓への負担を軽減します。1日6g未満が目標とされることが多いです。

    カリウム制限

    腎機能が低下すると、カリウムが体内に蓄積しやすくなり、高カリウム血症(不整脈などの原因となる)を引き起こすことがあります。必要に応じて、生野菜や果物、イモ類などのカリウムを多く含む食品の摂取を調整します。

  • 運動療法

    適度な運動は、筋力維持、血圧コントロール、血糖コントロールなどに繋がり、腎臓病の進行予防に役立つことがあります。ただし、過度な運動はクレアチニン値を一時的に上昇させたり、体調を悪化させたりする可能性もあるため、医師に相談しながら無理のない範囲で行いましょう。

  • 禁煙

    喫煙は腎機能を悪化させる独立した危険因子です。禁煙は腎臓を守るために非常に重要です。

  • 節酒

    過度な飲酒は肝臓だけでなく腎臓にも負担をかける可能性があります。適量を守ることが大切です。

  • 薬物療法

    血圧を下げる薬(降圧薬)

    特にACE阻害薬やARBといった種類の薬は、血圧を下げる効果に加えて腎保護作用も期待され、よく用いられます。

  • 血糖値を下げる薬

    糖尿病性腎症の場合、血糖コントロールが最も重要です。

  • 脂質異常症治療薬

    脂質異常も腎機能悪化のリスクとなるため、必要に応じて使用されます。

  • 利尿薬

    むくみや心不全の管理のために使用されることがあります。

  • その他、貧血改善薬、カリウムやリンの吸着薬など、状態に応じて様々な薬剤が使用されます。

  • 原疾患の治療

    クレアチニン値の異常が、腎臓以外の特定の疾患(例えば、膠原病や感染症など)によって引き起こされている場合は、その原疾患の治療が優先されます。

定期的な検査と経過観察の重要性

一度腎機能が低下すると、完全に元通りになることは難しい場合も少なくありません。そのため、治療を開始した後も、定期的に血液検査や尿検査を受け、腎機能の推移や治療効果、副作用の有無などを確認していくことが非常に重要です。医師の指示に従い、根気強く治療と経過観察を続けることが、腎臓を長持ちさせるための鍵となります。

クレアチニン値の上昇を防ぐための日常生活のポイント

クレアチニン値を正常範囲に保ち、腎臓の健康を維持するためには、日々の生活習慣が非常に大切です。
以下に、日常生活で心がけたいポイントをまとめます。

  • バランスの取れた食事を心がける

    過度なタンパク質の摂取は避け、野菜やきのこ類、海藻類などもバランス良く取り入れましょう。

    塩分の摂りすぎに注意し、薄味を心がけましょう。だしや香辛料を上手に使うと、減塩でも美味しく食べられます。

    加工食品やインスタント食品は塩分が多い傾向にあるため、摂取頻度を控えめにしましょう。

    適切な水分補給を心がける

    脱水は腎臓に負担をかけるため、こまめに水分を摂取しましょう。ただし、医師から水分制限の指示がある場合は、その指示に従ってください。

    一度に大量の水を飲むのではなく、少量ずつ分けて飲むのがポイントです。

    適度な運動を継続する

    ウォーキングや軽いジョギング、水泳などの有酸素運動は、血行を促進し、生活習慣病の予防にも繋がります。

    激しすぎる運動は、かえって腎臓に負担をかけることもあるため、無理のない範囲で継続することが大切です。

    十分な睡眠と休息をとる

    睡眠不足や疲労は免疫力を低下させ、様々な身体の不調に繋がります。規則正しい生活を送り、質の高い睡眠を確保しましょう。

    禁煙を徹底し、飲酒は控えめにする

    喫煙は腎機能悪化の大きなリスクです。禁煙することで、腎臓への負担を軽減できます。

    アルコールの飲みすぎも腎臓に悪影響を与える可能性があります。適量を守りましょう。

    ストレスを溜めないように工夫する

    過度なストレスは血圧上昇などにも繋がり、間接的に腎臓に影響を与えることがあります。自分なりのリフレッシュ方法を見つけ、上手にストレスを解消しましょう。

    自己判断でのサプリメント摂取や極端な食事制限は避ける

    腎臓に良いとされるサプリメントでも、個人の状態によっては逆効果になることもあります。また、自己判断での極端な食事制限は栄養バランスを崩し、健康を害する可能性があります。必ず医師や管理栄養士に相談しましょう。

    定期的な健康診断の受診

    自覚症状がないまま腎機能が低下していることもあります。定期的に健康診断を受け、クレアチニン値や尿検査の結果を確認し、早期発見・早期対応につなげましょう。

クレアチニンについての Q & A

ここでは、クレアチニンに関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

  • クレアチニンの基準値はどれくらいですか?基準値から外れるとどうなりますか?

    クレアチニンの基準値は、測定方法や検査機関によって多少異なりますが、一般的に男性で0.65〜1.09mg/dL、女性で0.46〜0.82mg/dLの範囲とされています。
    この基準値は筋肉量に影響されるため、筋肉量の多い男性の方が女性よりも高くなる傾向があります。

    基準値より高い場合: 血液中のクレアチニン濃度が高いということは、腎臓が老廃物を十分に排泄できていない可能性を示唆します。これは、腎機能の低下が疑われるサインです。腎炎、腎不全、尿路閉塞などの病気が原因である可能性があります。
    基準値より低い場合: クレアチニン値が低い場合は、筋肉量が極端に少ない状態(筋ジストロフィーなどの神経筋疾患や、長期の寝たきりなど)が考えられます。ただし、これ単独で大きな問題となることは少なく、他の検査結果と合わせて総合的に判断されます。

    出典

    日本腎臓学会編. CKD診療ガイドライン2012. 東京医学社, 2012.

    Levey AS, Stevens LA, Schmid CH, et al. A new equation to estimate glomerular filtration rate. Ann Intern Med. 2009 May 5;150(9):604-12. doi: 10.7326/0003-4819-150-9-200905050-00006.

  • クレアチニン値を下げるにはどうすれば良いですか?

    クレアチニン値は腎機能の指標であり、数値を直接下げることを目的とするよりも、その原因となっている腎機能の低下を防ぐ、あるいは改善することが最も重要です。
    以下に、腎臓の健康を保つための一般的な生活習慣の改善点を挙げます。

    • 塩分を控える

      過剰な塩分摂取は高血圧を引き起こし、腎臓に負担をかけます。1日の塩分摂取量を6g未満に抑えることが推奨されています。

    • タンパク質の摂取量を調整する

      タンパク質の過剰摂取は、体内でクレアチニンなどの老廃物を多く作り出し、腎臓に負担をかける可能性があります。ただし、自己判断で極端な制限はせず、必ず医師や管理栄養士に相談してください。

    • 適切な水分補給

      適度な水分は、腎臓が老廃物を排泄するのを助けます。ただし、腎機能が著しく低下している場合は水分制限が必要なこともあるため、医師の指示に従ってください。

    • 適度な運動

      ウォーキングなどの有酸素運動は、血圧を下げ、全体的な健康状態を改善するのに役立ちます。

    • 禁煙

      喫煙は腎臓の血管を傷つけ、腎機能を悪化させる大きなリスク因子です。

    これらの対策は、腎機能の保護を目的としたものであり、クレアチニン値を直接的に下げる魔法のような方法ではありません。必ず専門医の診断と指導のもとで治療を進めることが重要です。

    出典

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  • eGFR(推算糸球体濾過量)とは何ですか?クレアチニン値とどう違うのですか?

    **eGFR(estimated Glomerular Filtration Rate)**は、血清クレアチニン値、年齢、性別から、腎臓が1分間にどれくらいの血液をろ過してきれいにできるか(糸球体濾過量)を推算した値です。単位は「mL/分/1.73m²」で表されます。
    クレアチニン値は筋肉量の影響を受けるため、同じ数値でも高齢者や女性では、より腎機能が低下している可能性があります。eGFRは、そうした年齢や性別の影響を考慮して、より正確に腎機能の状態を評価するために用いられます。

    • クレアチニン

      腎臓から排泄される老廃物そのものの血中濃度。筋肉量の影響を受ける。

    • eGFR

      クレアチニン値などを用いて計算される、腎臓の「ろ過能力」の推定値。年齢・性別の影響を補正している。

    健康な人のeGFRは90以上ですが、60未満になると慢性腎臓病(CKD)が疑われ、専門医による詳しい検査や治療が必要となります。

    出典

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更新日:2025年10月03日