患者の達人

腹膜透析の情報誌「スマイル」

2018年スマイル春号 腹膜透析(PD)と共に自分らしく暮らす患者さんをご紹介します。

記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。
PDの処方は医師の判断に基づき行われます。また、「患者の達人」の記事には患者さん個人の感想・意見が含まれており、全ての方に該当するものではありません。

2018年スマイル春号 患者の達人

周囲のサポートで穏やかなPDライフ

99歳というご高齢の大竹将喜さんは、現在は老人ホームで生活しながらPDライフを送っています。周囲のサポートや社会資源の上手な活用により、人生を楽しんでいらっしゃる大竹さんの日々のご様子を教えていただきました。

大竹 将喜さん(99歳) PD歴:4年3ヵ月 かかりつけの医療機関:東京慈恵会医科大学 葛飾医療センター

前列左から須賀さん、大竹さん、池田先生(主治医)後列左から伊藤さん、高塚さん

在宅でPDをやってあげたいというご家族からの希望により導入

1918(大正7)年生まれの大竹さんは茨城県のご出身。1946年に、自動車を製造する機械などのゴム・科学用機械の製造および販売を行う会社を東京都葛飾区に創業し、長年、地域産業の発展に貢献しました。また、故郷を思い、出身小学校に滑り台、ブランコ、オルガン、そして皆に親しまれている「大竹文庫」の本などを寄贈したり、東日本大震災で倒壊した二宮尊徳像の再建に尽力するなど、「郷土の偉人」として小学校のホームページでも紹介されています。

写真:前列左から須賀さん、大竹さん、池田先生(主治医)
後列左から伊藤さん、高塚さん

大竹さんが初めて東京慈恵会医科大学葛飾医療センターを受診したのは約10年前。クレアチニン値が上昇し、かかりつけ医から紹介されました。薬物治療により状態が落ち着き、その後保存期の治療を続けてきましたが、5年ほど経過するとクレアチニン値が再び上昇し、透析導入が必要なレベルまで腎機能が悪化してしまいました。

通院の際にはいつも息子さんご夫婦と一緒だった大竹さん。ご家族は主治医の池田先生から、大竹さんの病状を説明され、在宅で行える腹膜透析(PD)が向いていると勧められると、「ぜひ家でやってあげたい」とPDを選択することを決めました。

大竹さんがPDを導入したのは95歳の誕生日を目前に控えた2013年8月。1日に2回、バッグ交換を行うことにしましたが、大竹さんの場合、バッグ交換、排液の処理や出口部の消毒をご自身で行うのは難しかったため、ご家族にサポートしてもらいました。

社会資源を活用しPDを継続

大竹さんが創業した会社を引き継いでいたご家族はとても忙しく、手が回らないときは、ショートステイを利用したり、近隣の診療所に一時入院するなど社会資源の活用や周囲の人たちのサポートにより、順調にPDを継続してきました。大竹さんご自身も「透析についてはなんともありませんね」と話します。

しかし、ご家族もだんだんと年齢を重ね、大竹さんのサポートを毎日行うことが難しくなってきました。そこで、2017年の初めから大竹さんは近くの老人ホームへ生活の拠点を移すことにしました。幸い、施設でもPDをサポートしてくれることになり、1日2回のバッグ交換を続けています。現在は、テレビで時代劇や長谷川一夫の映画を鑑賞したり、天気の良い日には車椅子を押してもらって散歩をするのを楽しみに生活しています。大竹さんは「散歩に連れて行ってもらうと、気分がスッキリします」と言います。

大竹さんに好きな食べ物を伺うと、「イナゴが大好きなんです」と笑顔を見せ、「こりっとしていておいしいんですよ。今は家族が買ってきてくれるんです。そういえば、イナゴは故郷の茨城でも獲れましたね」と懐かしそうに話してくださいました。

ドクターからのメッセージ

東京慈恵会医科大学葛飾医療センター
腎臓・高血圧内科診療部長 池田 雅人 先生

透析を行うことで少しでも人生を楽しめる可能性が残されているのであれば、超高齢者であっても透析は一度試みる価値のある治療法だと思います。特にCAPDはHDに比較して透析後の疲労困憊が少なく、超高齢者には適していると考えられます。大竹さんの場合はお好きな果物などの食事制限が少ない点、HD終了帰宅後のご家族の対応が難しいという点からPDを選択され、とてもうまくいきました。
大竹さんのご家族は大竹さんをとても大切になさっています。通院されるときは息子さんご夫婦が必ずご一緒ですし、PDを導入するときも、「やってあげたい」という強い意思を感じました。超高齢者がPDを続けるにはご家族のサポートが必要ですから、心強いことです。最近、大竹さんは生活の拠点を老人ホームに移されましたが、現在、大竹さんがお元気で過ごされているのも長期間のご家族のサポートがあってこそ。支えてこられたご家族に本当に敬服しております。これからも大竹さんご本人には、好きなものを食べて、ご家族と過ごす時間を楽しんでいただきたいですね。

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