患者の達人

腹膜透析の情報誌「スマイル」

2016年スマイル冬号 腹膜透析(PD)と共に自分らしく暮らす患者さんをご紹介します。

記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。
PDの処方は医師の判断に基づき行われます。また、「患者の達人」の記事には患者さん個人の感想・意見が含まれており、全ての方に該当するものではありません。

2016年スマイル冬号 患者の達人

「どうにもならんこと」はぐずぐず考えず、毎日を楽しく過ごすのが元気の秘訣

80歳でPDを開始した川西さん。2年以上たった現在も、大きなトラブルなくご自宅での治療を続けています。 家事もPDもできるだけ自分でこなすという川西さんに、元気な暮らしの秘訣をお聞きしました。

川西 ヤヨヱさん(82歳) PD歴:2年5ヵ月 かかりつけの医療機関:高松赤十字病院

PD外来スタッフの皆さんと。前列左から南原愛子さん(看護師長)、川西さん。後列左端が山中正人先生(主治医)

幼い頃から働き者で、「出産以外に寝込んだことがなかった」

川西さんは現在、2歳年上のご主人と長男夫婦、それに社会人のお孫さんと一緒に暮らしています。琴平電鉄沿線にあるご自宅には、建て替えも経て45年間住んでいるそうです。

写真:PD外来スタッフの皆さんと。
前列左から南原愛子さん(看護師長)、川西さん。後列左端が山中正人先生(主治医)

この秋82歳になった川西さんは、幼い頃から働き者でした。男ばかりの兄弟の中で唯一の女の子だったため、戦時中だった小学校2年生の頃から洗濯や炊事を引き受けていました。「大きな鍋でご飯を炊いて、畑で採れた野菜でお汁を作って……。家族が多かったから大変やった」と振り返ります。終戦後、お兄さんの子供が産まれてからは、重湯を作って飲ませたり面倒をみるのも川西さんの仕事だったそうです。

その後、ご主人と結婚し、2人の子供を育てながら、花屋やうどん屋で70歳過ぎまで働きました。仕事を辞めた後も元気に過ごしていた川西さんの腎臓病がわかったのは、2年前の春。体調を崩してかかりつけ医を受診したところ、高松赤十字病院を紹介され、検査の結果、透析が必要と告げられたのです。それまで風邪ひとつひくこともなく、出産以外で寝込んだことがなかった川西さんは、「そりゃ、びっくりした。1回だけでなく、一生せないかん。それだけで気が遠くなりそうや」と思いました。

血液透析は「1日おきの通院で大変だから」と、自宅でできる腹膜透析(PD)を選択。1ヵ月の入院期間中にPDのやり方をしっかり習い、確実に自分で行えるようになってから退院しました。最初は不安もありましたが、「家でできるんやからと思って、腹をくくった(笑)」と川西さん。今ではすっかり慣れ、「目をつむっていてもできるような気がする」と話します。

自分のことは自分でやるのが当たり前 ひ孫の顔をみるのが今の目標

小柄な体格の川西さんがお腹に入れる透析液は1回につき1リットル。1日5回(6時半、10時、15時、18時、22時)のバッグ交換を行います。働き者の川西さんにとって、自分のことはできるだけ自分でやるのが当たり前。バッグ交換はもちろん、掃除や洗濯をしたり、家族全員分のご飯を炊き、自分とご主人の分のおかずを用意するのも川西さんの日課です。近所のスーパーにも自転車で颯爽と出かけます。「乗ったり押したりでゆっくりやけどな」と笑います。

家事とPDの両立は忙しそうですが、冬は起きる時間を遅くしてバッグ交換の時間もずらすなど、臨機応変に対応しているので、大変さは感じないそうです。週2回のデイケアにも、10時のバッグ交換を9時に、15時を15時半にずらして出かけています。デイケアでは軽い体操やクイズをしたり、踊りを見たりするほか、お友達とのおしゃべりも楽しみのひとつ。誰にでも積極的に話しかける川西さんは、病院の外来でもいつもほかの患者さんと笑顔で話している人気者です。

現在の目標は、結婚したお孫さんの子どもの顔を見ることや、これからのお孫さんの結婚を見届けること。さらに、「お父さん(ご主人)のご飯作りも続けていきたいから、これからも元気でおらんとな」と話します。長い人生の間には、台風による水害に見舞われたり、ご家族が怪我や病気で入院したりと大変なこともたくさんあったそうですが、「どうにもならんことを、ぐずぐず考えても仕方ない」。何ごともおおらかに受け止め、毎日の暮らしを楽しんでいる川西さんは、まさしく『人生の達人』と言えるでしょう。

ドクターからのメッセージ

高松赤十字病院 泌尿器科
腎不全外科部長 山中 正人 先生

川西さんをはじめて近医より紹介いただいた時には、eGFRが8.7と腎硬化症による末期腎不全でした。80歳と高齢でしたが、くも膜下出血で倒れられたご主人の介護のため、腎代替療法として在宅透析であるPDを進んで選択されました。PD開始後、1年過ぎに腹壁臍ヘルニア嵌頓のため緊急手術が必要となり、外科担当医よりPDの継続は難しいと言われました。川西さんの生活の質、生活機能維持のためにPDを継続したいという強い希望より、術後2週間は血液透析を施行しましたが、PDを再開し継続できています。お孫さんの結婚、ひ孫の誕生まで引き続きPDが続けられればと願っています。

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