クローズup PDホスピタル
腹膜透析の情報誌「スマイル」
広島県
地方独立行政法人 広島市立病院機構 広島市立広島市民病院
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。
患者さんのより良い予後のために近隣の医療機関と連携を図る
同院の内科には、広島市内はもとより、県内や近県の医療機関からも数多くの紹介があり、月間500人を超える慢性腎臓病（CKD）患者さんが通院しています。「腎臓病は早期から治療を始めることが、患者さんの予後を改善する機会につながりますので、近隣の病院や開業医の先生方との相互理解を深めることが大切だと考え、近隣の先生方を対象に年に数回勉強会などを開催しています」と話すのは人工腎臓センター部長兼内科部長の木原隆司先生。
また、急性および慢性の腎不全に対しては、人工腎臓センターにて、透析治療をはじめとする体外循環治療を幅広く提供しています。腎代替療法のうち、移植以外は対応可能で、昨年は約70人の方が同院で透析を開始しました。透析開始後は、血液透析（HD）の方は基本的にご自宅近くの医療機関での治療となりますが、腹膜透析（PD）の方は引き続き同院の人工腎臓センターに通院されています。
主体的に治療を選択できるように看護師による「療法選択説明」を実施
同院における血液浄化療法の歴史は、人工腎臓センター設立の8年前に泌尿器科医が腹膜灌流を行ったことから始まりました。4年前からは腎代替療法が必要になる患者さんに対して、看護師が各治療法について詳細に説明する「療法選択説明」の機会を設けています。
写真：病棟看護師の皆さんと木原先生（左から4人目）
「HDやPDについて患者さんが知りたい情報をお話ししますので、透析の準備段階にある患者さんにとって重要な説明です。これから始まる治療に対して緊張して来院される患者さんやご家族に、話しやすい環境を作ることを心がけて、個室でゆっくり時間を取ってお話をします。今の気持ちや不安、治療に対する思いを傾聴し、生活背景や生活リズムを把握しながら、どちらの透析療法が適しているか、ご自分の生活スタイルに当てはめて考えることができるように情報提供を行っています」と、療法選択外来を担当する人工腎臓センター主任岡本和美看護師は話します。また、この時の様子や患者さんの背景はカルテに記録され、透析導入時には病棟看護師にも共有されています。「腎代替療法は、いずれの治療を選んでも生活に影響が及ぶ治療ですが、患者さんご自身が治療法を選ぶことによって、治療にも積極的に関わってもらえ、より充実した生活を送っていけるのではないかと考えています」と、木原先生も療法選択説明の重要性を強調しています。
患者さんの快適なPDライフをチーム医療で支援
現在、人工腎臓センターに通院するPD患者さんは17人。患者さんが安心して快適なPDライフを送れるように、訪問看護を積極的に取り入れたり、患者さんが他の合併症で入院しても該当する病棟の看護師がPDの操作をサポートできるように、接続操作の動画を電子カルテで共有したりと、さまざまなサポート体制がとられています。 PD外来では、採血などの検査結果を待つ間に看護師による問診や血圧測定、出口部の観察が行われた後、医師による診察という流れで診療が行われています。「患者さんは問診の際、生活面での相談や主治医には直接言いにくいことを看護師に話してくれているようです。先に看護師が問題点を発見し、患者さんの要望を聞いておいてくれるため、ポイントを絞って診療することができて助かっています」（木原先生）。
最後に、木原先生は「腎代替療法の中でも生活の質を維持できるPDを選ばれたのですから、そのメリットを最大限生かし、ご自分の生活を大事にして精一杯生きてください。私たちもできうる限りサポートします」とPD 患者さんへエールを送ってくださいました。
